パウエル議長:強い経済の恩恵が届かない

ジェローム・パウエルFRB議長が、とある賞の授賞式で話した挨拶が注目を集めている。
議長がタカ派からハト派まで幅広い層から信頼を得ている理由がうかがわれる内容だ。


ここではパウエル議長挨拶から興味深い、連続する4段落を抜き出し、そのまま訳文を掲載する。
特に意義深く思える部分を太線で示す。

「FRBの使命は強い経済と健全な金融システムを促進することだ。
このゴールに向かってFRBが大きな進展をしてきたことを喜んでいる。
失業率は3.7%と半世紀近くで最低だ。
今回の景気拡大期で17百万人を超える雇用が創出され、10月にもさらに250千人が就業した。

労働市場以外でも、強い経済の兆しが見えている。
失業率の堅実な低下は、過去5年間のFRB調査への回答者から報告された金銭的困難の低下を反映するものだ。
賃金上昇、家計資産の増加、消費者信頼感の上昇が、力強い消費支出を支えている。
危機以来FRBは他にも多くの段階を踏んで、いい時も悪い時も金融システムが消費者・コミュニティの金融ニーズを支えるための機能を維持させ、同時に安全・強固にしてきた。

しかしながら、この強い経済・健全な金融システムの恩恵は、すべてのアメリカ人に届いているわけではない
総体の統計は、所得・人種・地域による重大な不均衡を隠してしまいがちだ。


その上、経済は数々の長期的な試練に直面している。
最近、賃金上昇のペースが上がってきたとは言え、低所得の労働者の賃金は過去数十年とてもゆっくりとしか上昇してこなかった。
生産性はこの数年のとても緩慢な上昇の後、最近数か月は上昇してきたが、これが持続的な傾向であるかどうかは明らかでない。
高齢化が労働力の供給増加を限定的なものとし、それが潜在成長率を限定してしまう。
そして、数十年にわたる米国における経済的可動性の低下は、低所得のアメリカ人が経済的階段を登っていくことの難しさを示している。」

あらゆる組織、特に官僚や学者の組織の中には、その責任範囲を杓子定規に捉え、狭く定義しようとする人も少なくない。
これに対し、パウエル議長はマクロな数字に表れている成果に満足するのでなく、その中身をさらに吟味しようとしている。
米国における中間層の没落は、かつての中間層を低所得者層に落とし、それがトランプ政権誕生の大きな原動力となった。
以前からの低所得者層は、好景気の恩恵を少しばかり受けてはいるものの、上を目指す手掛かりは見えず、ある者はトランプ大統領を、あるものは民主党左派を支持している。

もちろん、この問題に本来あたるべきは政府や議会なのだろう。
しかし、今のFRBはそうした問題にも目を向ける度量を備えている。


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