ニール・カシュカリ総裁:「たるみ」はまだ残っている

ミネアポリス連銀ニール・カシュカリ総裁が、速すぎるFRB利上げへの心配を語った。
米労働市場にはまだ「たるみ」が存在し、景気刺激を続けてもインフレが起こらない可能性が高いという。


「FRBは雇用が最大化されたと考えてきたが、賃金上昇はそれほどでもない。
失業率はさらに下がり、インフレは制御されている。」

着任してから3年間に感じてきたサプライズについてカシュカリ総裁がCNBCで語った。
同総裁はFOMCの中で最もハト派のメンバーとされる。
総裁はなぜそうした政策スタンスをとるに至ったか理由を明かしている。

もしも米経済が毎月200千人分の雇用を創出できるなら、雇用は最大化されていないということだ。

歴史的に見れば、失業率は供給力の重要な要素である労働力の「たるみ」を示す良い指標だった。
カシュカリ総裁によれば、リーマン危機後には、失業率が良い指標でなくなったのだという。
リーマン危機があまりにも破壊的だったため、多くの労働者を労働市場から追いやってしまった。
少し景気がよくなったからといって、彼らの全員がすぐに求職を始めるわけではないのだという。

「彼らが労働市場に戻って来るペースはとてもゆっくりだ。
もしも賃金が上昇した場合、どれだけの労働者が戻って来るかわからない。
引退した人のうちどれだけの人が『あと数年働きたい』と言い出すかわからない。」


まだどれだけ米経済にたるみがあるかわからない。
たるみがあるうちは、賃金もインフレも問題とならないはずだ。
だから、カシュカリ総裁は当面の間、賃金・インフレ・インフレ期待の動向を見極めるべきと考えている。

市場では中立金利と政策金利の位置関係を議論するのがさかんだ。
しかし、カシュカリ総裁は、中立金利の概念・推定にそもそも「大きな不確実さ」があると指摘する。
総裁個人は、すでにFF金利が中立金利に近いところにあると考えている。
だが、中立金利のもつ「不確実さ」を考えると、それを主たる論拠とすべきでないと滲ませている。

「だからこそ私はデータを見る。
インフレ、インフレ期待、賃金上昇、雇用創出、これらすべてがたるみの存在を示している。」

現在の米経済では、金融・財政刺激策が続いていてもインフレが起きていない。
カシュカリ総裁は「たるみ」の存在の他に、FRBの実績と独立性がそれに寄与しているという。

「インフレ期待はとてもよくアンカーされている。
その理由はFRBが政治的に独立しているから、20-30年にわたりいい仕事をしてきたからだ。
これがインフレ昂進なしに米経済を強くし続け、労働市場を改善し続けたのだと思う。」

だから、このいい状態を続けるべきとし、トランプ大統領からの横槍を牽制した。
とは言え、カシュカリ総裁と大統領が望む方向性は一致している。

私が心配するのは、雇用にまだたるみがあり賃金が上がっていない中での拙速な利上げだ。
FRBが急激に利上げすれば景気後退を引き起こし、それは誰も望んでいない。


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