FoxとTwitterの礼儀正しく陰険な戦い

保守系大手メディアFox NewsがTwitterに挑んだ神経戦がTwitter株価の重しになっているのではと噂されている。
Foxの気持ちはよくわかるが、そのやり口がとても陰険で面白い。


その事件が起こったのは11月7日だった。
Fox Newsで番組ホストを務める保守系コメンテーターTucker Carlson氏のワシントンDC北西区にある自宅前に反レイシズム団体Smash Racism D.C.が集まり、控えめなシュプレヒ・コールを上げたのだ。

「タッカー・カールソン、私たちは戦うぞ!
お前がどこで寝ているか知ってるぞ!」

この時の様子をリベラル系のWashington Postはビデオに収録しYouTubeで公開している。
個人宅前に群れをなしシュプレヒ・コールを上げるのは決して品のいい行為とは言えないが、かと言ってビデオを見る限りは暴力的な集団とも見えない。
WPはカールソン氏の主張を伝えている。

「妻は1人でキッチンにいて、夕食にでかけようとしていた。
玄関のドアを乱暴に叩く音と叫び声が聞こえた・・・
だれかが正面のドアに体当たりし、正面のドアには実際ひびが入ったんだ。」

本当ならば器物破損などの犯罪行為だ。
翌日の午後WPは外部のジャーナリストErik Wemple氏とともにカールソン邸を再訪している。
Wemple氏は、確かに歩道に書かれた「A」の文字を確認している。
DC警察の報告書によれば、これはアナーキーのマークなのだという。
一方、カールソン氏が語ったドアのひびについては警察の報告書には載っていないという。

Wemple氏は邸内の女性にドアのひびについて尋ねたが、一瞥して肩をすぼめただけで、明確な回答はなかったという。
Wemple氏は、そのジェスチャーをドアが無事との意思表示と受け取ったが、断言はできない。
そこで、ドア全体の写真を掲載している。
とてもきれいで、体当たりしたような跡もみえない。
前日の晩のYouTube映像に映っているドアとよく似ている。
そんなにすぐに似たドアと交換できたのだろうか。
ディテールは闇の中だ。


ドアに体当たりしたかどうかはわからないが、個人の家の前で示威行動を行うのは決して支持できるものではない。
DC警察もこれを犯罪として捜査するとの声明を出している。

「安全で平和的なやり方で憲法修正第1条(表現の自由ほかを定めた憲法修正条項)の行使に来る人たちを我々は歓迎する。
しかし、法を破ることを許しはしない。
昨晩、抗議の集団がDC北西区の個人宅に落書きした。」

実際のところ、この団体が真に悪質だとするなら、それは落書きではない。
真に悪質なのはSNSの悪用である。
公人等を名指しで批判するのは(根拠がある限り)許されるとしても、それが脅迫になれば犯罪だ。
この件でも、同団体はカールソン氏の居所をTwitterで暴露し、団体行動を呼びかけていた。

Fox Newsがついに切れた。
8日、Fox NewsはCEOと社長の連名で、7日の示威行動について厳しい抗議の声明を出している。
その矛先は反レイシスト団体だけにとどまらなかった。
よほどTwitterに対して怒りを覚えたのだろう。
Fox Newsはそれ以降一切のツイートをやめたのだ。

Fox Newsは、18百万人超とされるフォロワーへのアピールを自ら取りやめた。
Politicoは、FoxNews.comへのトラフィックの3%近くがTwitter経由であるとの推計を紹介している。
沈黙の抗議にも機会損失がともなうのだ。

Twitter株が29日8.7%急落した。
Bloombergは急落するような目立った材料はなかったと指摘し、数人のトレーダーの話を伝えている。
彼らによれば、Fox Newsによるボイコットが一因ではないかというのだ。
なんとも説得力のない噂話ではないか。

Fox Newsは30日現在も沈黙の抗議を続けている。
ただし、同社サイトのニュース記事にはあいかわらずTwitter用シェア・ボタンは付されたままだ。


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