米ドル

 

損保ジャパン日本興亜が想定するドル円相場

損保ジャパン日本興亜の2018年度下期運用計画が、本邦投資家の思いをよく代弁している。
そこでは来年以降の円高転換が想定されている。


ヘッジコストが上昇しているドル建てのヘッジ外債を売却すると共に、19年以降の円高転換の可能性に備え、外貨建て投資のエクスポージャーを圧縮し、その分を金利水準の上昇した国内の超長期債や国内融資等に資金を振り分けていく。

損保ジャパン日本興亜の下期運用計画をReutersが伝えている。
なんと濃密で刺激的な表明ではないか。
一句一句噛みしめておこう。

ヘッジコストが上昇しているドル建てのヘッジ外債を売却
このところのドル金利上昇でヘッジ付き米ドル建て債券のための為替ヘッジのコストは高止まりしている。
為替ヘッジのコストは大まかにいって金利差とドル需要で決まる。
FRB利上げが進む中で米短期金利は上昇し、短期金利差が拡大したことで、コストのうちの金利要因部分が大きくなっている。
一方、投資・リスク回避・決済・規制などの観点からドル資金への需要が高まり、需給要因部分(ベーシス)も大きかった。
ヘッジ・コストの高止まりはヘッジ後の円投ドル転でのドル債利回りを物足りない水準に押し下げている。

こうした売却の為替相場への直接の影響は小さい。
ドル債の売却にともないヘッジも解消されるためだ。
ただし、ドル金利にはわずかに影響を及ぼす。
ヘッジが短期、債券投資が長めの足と仮定すると、この解消は短期金利を押し下げ長めの金利を押し上げるとの連想が働く。
ただし、損保ジャパン日本興亜というクジラにして500億円程度の売却見込みだから、日系保険会社を合わせても米国債市場を揺るがすような規模にはならないだろう。
(もちろん、世界中のさまざまな投資家が同様の行動をとれば話は別だ。)


19年以降の円高転換の可能性
損保ジャパン日本興亜は「2019年に入ると、トランプ減税の効果が剥落し、米国経済に停滞感が現れ、米連邦準備理事会(FRB)による利上げはペースダウンする」との見方を示したという。
これは現在、米市場で急速に進む心理変化と合致したものだ。
ここから連想されるのは、金利差縮小・ドル需要低下によるヘッジ・コスト低下だが、同時に実質金利も低下してしまうであろうということ。
米イールド・カーブがフラット化すれば、長期債を短期金利差でヘッジする投資の魅力は小さくなるだろう。
世界経済の鈍化が心配される中で、果たしてそれをオフセットするだけベーシスは低下するだろうか。

国内の超長期債や国内融資等に資金を振り分け
日銀は長期金利ターゲットに幅を持たせ、事実上わずかに上昇を容認する姿勢を見せている。
幸か不幸か、日銀の取り組みはやりやすくなるだろう。
幸運なのは、超長期債への資金流入が増えれば長期金利は上昇しにくくなり、日銀のステルス・テーパリングの追い風となること。
日銀はさらに国債買入れ額を減らすことができるかもしれない。

不幸なのは、景気の悪化が起こると含意されていること。
そうなれば、日銀がやれることはかなり限られてしまっている。
マネタリー・ベースを増やすこと自体にたいして意味がないことは「総括的な検証」で事実上認めたとおりだ。
意味があるのは、長めの国債を買い入れて長めの金利を押し下げることだったのだが、これも副作用が大きすぎて限界が見えている。


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