スティーブン・ローチ:米量的緩和の5つの教訓

元モルガン・スタンレー・アジア会長スティーブン・ローチ氏が、FRBのQE開始から10年目の今月その教訓を総括している。
金融政策正常化で一歩先を行く米国だが、心配事はいずこも同じだ。

「二度と再びQEのような非伝統的政策実験を必要とする状況に陥らないことを祈ることもできる。
しかし、もしも新たな金融危機が噴出すれば、私たちが学んだ、あるいは少なくとも学ぶべきだったことを思い起こす価値があるだろう。」


ローチ氏がProject Syndicateで、QEの教訓を心にとめるべきと話している。
もちろん二度と金融危機が起こらないとは考えていない。
さらに、そうなれば安易に再び非伝統的金融政策が求められるであろうことを予想しているのだろう。
真に必要であれば当然実施せざるを得ない。
しかし、過去10年の経験から、QEには大きなよからぬ副作用があることも明らかだ。
ローチ氏はQEの教訓を5つ挙げている。


  • 経済刺激効果: QE1は非常時の措置として有効だったが、QE2・QE3では効果が低減した。
    「FRBは、危機時に効果を上げたものがその後も同じように効果的と誤解していた。」
  • 金融バブル: QEが生み出した過剰流動性がバブルを膨らませた。
    「資産価格を形成したのは、経済のファンダメンタルズというより金融政策だった。」
    したがって、巻き戻しには逆に苦痛がともなう。
  • 格差拡大: 資産を保有する富裕層がさらに裕福になった。
  • 財政規律: FRBの国債買入れにより悪化した。
    「金融政策環境が通常に戻り金利が上昇すると、連邦政府債務増大が大きな問題になる。」
  • 治療か、予防か: 金融政策は危機に対応するだけでなく次の危機の土壌を生み出している。

ローチ氏は今も続く「lean or clean」(抑制か後始末か)の疑問を紹介している。

私たちは、危機が噴出した後の後始末に専念する受け身の中央銀行を欲するのか。
それとも、危機が起こる前に過剰を抑制する能動的な中央銀行を欲するのか。

おそらく多くの人はこの両方を望んでいるはずだ。
それでもこうした問いが発せられるのは、この両方が完全に両立するものではないためであろう。
危機対応であったはずの非伝統的金融政策は、政治家が経済回復を誇示するようになっても取り払われることはなかった。
この慢性的な緩和好きこそが次の金融危機のタネになってきたのだ。


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