佐々木融氏:ドル安・円安の同時進行

JP Morganの佐々木融氏が、米中間選挙の結果を総括し、今後の市場見通しを書いている。
日米TAGにおける為替条項は「日本の為替政策や金融政策の手足を縛るようなものではない」という。

「追加の税制改革など大きな政策変更はそもそも難しかったこともあり、今回の選挙結果はJPモルガンの米経済見通しに大きな影響を与えない。」


佐々木氏がReutersへの寄稿で、米中間選挙の経済見通しへの影響を総括している。
多くの市場関係者にとって、中間選挙の結果は予想どおりのものだったようだ。
トランプ政権と共和党は最初の2年でやれることはやっている。
これ以上の財政政策など財源の問題で余地が小さかったから、議会がねじれてもさしたる影響は出ないというものだ。
では、市場への影響はどうなのか。
米国株市場は中間選挙後のアノマリーがよく言われるが、為替市場はどうか。

「為替相場は今後、連邦議会がねじれ状態となったこともあり、ドルの買い持ちポジションの巻き戻しが起きる可能性がある。」

佐々木氏はドル安の可能性を指摘している。
では、円はどうか。
佐々木氏は、JP Morganがドイツの10-12月期の生産の大幅回復を予想していると紹介した上で、円安の方向性を示唆している。

「ユーロ圏の経済指標が改善してくると、中間選挙後の米株高でリスクオンが続く中、全般的にドル買い持ちポジションの巻き戻しが始まり、ドル安と円安が同時に進行する可能性がある。
クロス円は上昇が続くことが予想される。」


ドルと円はいずれも弱含みということらしい。
ドル円の方向性を占う上で市場関係者の頭から離れないのが日米の通商交渉だろう。
いわゆるTAG交渉において為替条項が入るのではないかとの心配がドル高円安予想を阻んでいる。

米国がメキシコ、カナダと結んだ新協定「USMCA」に盛り込まれた為替条項のほとんどの項目は、過去に国際通貨基金(IMF)協定や、先進7カ国(G7)、20カ国・地域(G20)の声明の中でうたわれている。
また、外貨準備や為替介入実績の公表などは、日本はすでに実施済みだ。
つまり為替条項の導入は、日本の為替政策や金融政策の手足を縛るようなものではない。

佐々木氏は、為替条項が直接的にドル円相場を動かす要因とはならないと解説している。
これは指摘のとおりなのだろうが、だから安心できる話でもあるまい。
佐々木氏は単に為替条項の効果について述べたにすぎない。
落とし穴は少なくともあつ2つはある。

  • 口先介入
    過去、米国がドル安を誘導するのには必ずしも為替についての紙の協定など必要なかった。
  • 米国にとっての最良の結果・日本にとって最悪の結果は何か
    米国にとっての最良の結果がドル安円高であるわけではない。
    米国は「ドル高は国益」と言ってきた国だし、ドル安で貿易の不均衡が解消する保証はない。
    米国にとって最良の取り決めは自由貿易を踏みにじるような数量規制だ。
    仮にドル安円高を誘導したからといって、アメ車が日本で目に見えて売れるようになるわけではない。
    おそらく為替条項や金融緩和への攻撃は米国にとっての交渉材料だろう。
    しかし、着地の目標はそこではなく、自動車などでの数量規制になるはずだ。
    これは、日本にとっても為替条項などよりはるかに厄介な話になる。

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