ローレンス・サマーズ:言い方が違う

ビル・クリントン政権の財務長官 ローレンス・サマーズ ハーバード大学教授が、中央銀行の独立性について論じている。
次の景気後退期には、政策効果を最大化するため金融・財政政策の協調が必要と説いている。


「トランプはFRBに対する言葉の使い方において深刻な誤りを犯している。」

サマーズ氏が自身のブログでトランプ大統領によるFRB批判を批判している。
トランプ大統領は景気への悪影響を恐れ再三FRBの利上げ姿勢を批判してきた。
サマーズ氏は、トランプ大統領の「言葉の使い方」を批判しているのだ。
なぜか。
トランプ大統領や共和党を厳しく批判してきたサマーズ氏だが、現状の金融政策についてのスタンスはトランプ大統領とかなり似ているからだ。
つまり、金融緩和を継続せよという立場だ。
最大の敵と同じ結論を論じるために、まず相手の上げ足をとったというわけだ。
ではサマーズ氏が適切と考える「言葉の使い方」とはなんだろう。
同氏は2点を挙げている。

1. インフレのオーバーシュートを許すべき

サマーズ氏は現状のインフレ水準が十分でないと考えている。

  • 物価水準目標
    「インフレは10年間にわたり目標より低い水準にあったのだから、長期的にインフレが平均2%となるためには、目標以上のインフレが必要だ。」
    FRBは物価水準目標を採用したわけではない。
    それでもサマーズ氏は、それが既定の路線かのように書いている。
  • 景気後退到来のリスク
    金融政策が景気に影響を及ぼすには1年以上かかるため、引き締め過ぎで景気を殺してしまうという主張だ。
    この議論は諸刃の剣だろう。
    FRBのタカ派は、タイムラグがあるがゆえに事前にインフレ予防を行っていると主張するはずだ。

2. 中央銀行の独立性はどうあるべきか

サマーズ氏は、中央銀行が政府の財政政策と完全に独立して金融政策を策定するのはばかげていると言う。
元財務長官はいくつかの例を挙げて読者に考えるよう促している。


  • リーマン危機後
    リーマン危機後、政府は債務の長期化を行い、FRBはオペレーション・ツイストを実施した。
    これらが互いに打ち消し合ってしまった。
    「協調した政策であったなら、間違いなく取引コストを減らし公共の利益のためになったのではないか?」
  • 為替相場
    為替は外交の一環であり政府の管轄だが、金融・準備管理政策にも大きく拠っている。

中央銀行の独立とはどうあるべきか。
実際のところ、中央銀行が政府からのプレッシャーを受けるのはトランプ大統領に始まったことではない。
かつて「マエストロ」と呼ばれたアラン・グリーンスパン元FRB議長は最近のインタビューで、すべての大統領からプレッシャーをかけられたと明かしている。
悲しいことに、政治家から利上げを求めることはなく、常に利下げを求められたのだという。

ややタカ派に寄ったように見えるFRBのスタンスが正しいのか。
いまだに趨勢的停滞論を主張し、ハト派的金融政策を求めるサマーズ氏やポール・クルーグマン教授のスタンスが正しいのか。
その判断は難しい。
また、サマーズ氏が主張するように、金融・財政政策が協調することで最大の効果を追求すべきというのは正論だろう。
その一方で、妙に協調した金融・財政政策はマネタイゼーションを招くのも事実だ。
何を是とし何を否とするかを決めるのかは経済学者ではなく市場だ。
この市場はとても移り気な性格を持っている。

中央銀行が政治的関心に従属していると見られれば、すぐさま市場における信認を失い、インフレ期待を高め、長期金利を上昇させてしまう。

日本の過去5年を見る限り、こうした教科書的な命題でさえ当てはまらないのではないかとの甘い考えを持ってしまうのだ。


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