フェイク・ニュースに呑み込まれたソロス・ニュース

先月22日、ジョージ・ソロス氏のニューヨーク州内の自宅郵便受けから爆発物が見つかったのは記憶に新しい。
悲しいかな、偉大な投機家は今やフェイク・ニュースの格好の素材となってしまった。


契機となったのは2015年のハンガリー オルバン首相による口さがない批判だった。
ソロス氏は、故国ハンガリーの民主派勢力に献金し、リベラルな大学を運営していた。
当時、ハンガリーは大量の移民流入について国論が割れており、オルバン首相はこの移民流入がソロス氏の仕業だと非難したのだ。
反対勢力との対立においてソロス氏のようなスケープゴートを設けることが有効と考えたのだろう。

これとともにネット上にはソロス氏のフェイク・ニュースが溢れることとなった。
ユダヤ人の大富豪投機家が社会運動の後ろで糸を引いているという《陰謀のセオリー》は魅力的だったのだろう。
こうしたフェイク・ニュースの作り手には2種類いる。

  • 誰かを非難することで得をする人(ハンガリーの場合オルバン陣営)
  • アクセスと広告収入を稼ごうとするサイト運営者

後者の例としては、米大統領選挙時のマケドニアのある村が有名だ。
純粋なカネ目当ての人たちはやっかいだ。
冷静な人はそもそもフェイク・ニュースなど相手にしない。
サイト運営者としては、フェイク・ニュースを喜んだり、真に受けたりする人たちがお客になる。
だから、フェイク・ニュースの内容がどんどんエスカレートし悪質になっていく。

最近ではソロス氏は映画『スターウォーズ』に出てくる帝国の皇帝に擬えて扱われるほどだ。
ソロス氏も自身に関するさまざまなフェイクについて気にしているらしく、こう話したという。


「こんなにウソが流布するのは困ったことだ。
自分のイメージを少し心配するようになったよ。」

中米から北に歩く移民の集団が米国を目指している。
トランプ大統領やその支持者たちは根拠を示すことなくソロス氏が後押ししていると批判している。
米大統領がフェイク・ニュースにお墨付きを与えようとしている。

かつて『ワグ・ザ・ドッグ』(アマゾン)という映画があった。
ダスティン・ホフマンとロバート・デニーロ主演のシニカルなコメディ映画だ。
ダスティン・ホフマン演じる映画プロデューサーが大統領選挙の手伝いに駆り出され、その場その場を切り抜けるために次々とフェイク・ニュースを作り出していくという話だ。
1997年の映画だが、今の現実をほぼ予想し尽くしたと言ってよい。
映画、テレビ、広告代理店など、あまりにもクリエイティブな才能のある人たちが政治をやりだすと社会は危うくなるのではないか。

トランプ大統領はある意味で日本の政治を正してくれているように感じられる。
あの醜怪な行動はまさに反面教師ではないか。

  • 過剰なメディアへの攻撃
  • 中央銀行のバッシング
  • 財政規律の弛緩

現在の日本の政権がやっていることがすべて悪いと言うつもりはないし、今の米国と比べればとてもまっとうだ。
日本の政権の不品行の10倍ぐらいの不品行をトランプ大統領は演じてくれる。
あれを見てしまっては、どんな政治家も少しは襟を正そうと思うだろう。
これはすばらしい好影響だ。


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