マーク・ファーバー:大資産インフレの終焉

スイス人著名投資家マーク・ファーバー氏が月例コメンタリーで、とても控えめに趨勢的弱気相場を予想している。
今後は押し目買いではなく、上げ相場で売ることに努めるべきだという。


読者には、風向きの変化が1981年から2016-18年の間の『大資産インフレ』を終わらせるかもしれないことを警告したい。
大資産インフレは、債券・株式・コモディティ・貴金属・不動産・美術品・収集品などを含むすべての資産の価格を膨張させた。

終末博士の発言が奇妙に慎重だ。
強気相場に陰りがない頃、ファーバー氏はのびのびと終末予想をしていた。
しかし、最近すっかり言葉遣いが控えめになっている。
世間に弱気予想が増えるにつれ、その実現可能性が高まることを感じ取っているのであろう。
自分の言葉が極端な解釈をされないよう慎重になっているようなのだ。

ファーバー氏は1981年から2016-18年を『大資産インフレ』と呼んでいる。
この時代はそのまま超長期の米金利低下局面である。

米10年債利回り(青)とCPI総合(赤)
米10年債利回り(青)とCPI総合(赤)

前回の転換点1981年とはボルカー・ショック、つまりポール・ボルカーFRB議長(当時)が1960年代後半から米国を悩ませていたインフレを2桁のFF金利でついに退治した瞬間だ。
つまり、この年は金利低下の始まりであり、低インフレ時代の始まりなのだ。
金利が低下しインフレが低下すれば(実質)資産価格にプラスに働くことは容易に理解できよう。
投資リターンは過去35年あまり、この下駄を履かせてもらっていたのである。


2016年に短期金利ばかりか長期金利まで想像を超える低水準まで低下したことで、超長期の金利サイクルが転換するのではと考える人が増えている。
最近の長期・超長期金利上昇はそうした思惑を後押しするものだった。
ファーバー氏ももちろん転換を予想する1人だ。

「世界中の株式は2016-18年の間に重要な高値を付けたと考えている。
米国の場合、通常の高値は2018年1月26日(S&P 500指数 2,872)だ。
それほど重要でない新高値こそ、さまざまな指数で2018年8月終わりから10月初めに付けているが、大多数の銘柄はその傾向を示していない。」

ファーバー氏は、1月の急落前の高値が事実上の天井圏と考えている。
米株価指数は上昇しても、構成銘柄における上昇銘柄数はどんどん細ってきた。
つまり、指数の上昇は、ごく一部の銘柄の上昇が演出したものであり、厚みに欠けるというわけだ。
ファーバー氏は、株式市場の風向きが変わったとし、基本的な投資戦略を奨めている。

現在の売られすぎの状態を考えると、数か月リバウンドが続くかもしれない。
しかし、世界の株式市場の大多数が新高値を付けるとは考えにくい。
ここでの投資戦略は、2009年3月以来通用してきた『押し目で買え』ではなく『上げたら売れ』だ。

こう考える投資家が増えれば、世界の株式の上値はどんどん重くなっていくだろう。
強気派がいくら経済・企業収益の良さをアピールしても、超長期の金利上昇局面というナラティブがそれに立ちはだかる。
これを撃ち砕くには、再び米金利が低下に向かうとの感覚が必要だ。
しかし、米金利の再低下は米経済の悪化を暗示するから、なかなか強気になりきれない。
こうした不安感が市場を覆う中、終末博士の言葉はあくまで控えめだ。

「資産価格は伸び悩むか下落する時代に入ったかもしれない。
これは資産インフレから資産デフレへの変化を示唆する。」


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