マーティン・フェルドシュタイン

 

フェルドシュタイン:金利上昇から景気後退への伝達経路

民主党・共和党両政権で要職を務めたマーティン・フェルドシュタイン ハーバード大学教授が、正統的なアプローチで明日の問題を議論している。
目新しい命題ではないが、明解・緻密に整理されたロジックは危機感を掻き立てる。

「今年正味で(S&P 500が)下落していないのは、企業収益の上昇とPERが12%低下したことの組み合わせによるものだ。
PERの低下は、今後数年で株価が上昇しやすいことを示している。」


フェルドシュタイン教授がProject Syndicateで書いている。
明るい話かと思えば決してそうではない。
現在のPERは過去の平均より40%も高いと説明、この主因が歴史的低金利にあると指摘している。
足元でこそいまだ低金利だが、これが今変化しつつあるのだ。
教授は3つの要因を挙げる。

  • FRB利上げ: FF金利は現在の2%超から2020年末に約3.5%へ。
  • 財政赤字拡大: 議会予算局によれば、政府債務は15兆ドルから2020年末に30兆ドル近くに。
  • 労働市場の逼迫: 賃金上昇が物価に転嫁される。

これらの要素が実質金利とインフレを上昇させる。

米10年債利回りが今後数年のうちに5%になっても驚くことではない。
インフレ率3%の下で、実質金利が過去の通常の水準である2%超に戻るだけだ。


ここから、米国ならではの経済波及効果が語られる。
米国における金利から景気への伝達経路は日本のそれとはまったく異なるのだ。

「この10年金利の正常化はPERを過去の水準に回帰させる。
過去の平均から40%も高い現水準からの低下は、家計の資産を8兆ドル縮小する。
過去の家計の資産と消費支出の間の関係から、年間の家計消費がGDPの1.5%分減少すると示唆される。」

家計の投資がさかんで内需主導型の経済では、資産効果によって景気が大きく左右される。
フェルドシュタイン教授によれば、この家計の需要減とそれにともなう企業投資減が景気後退を引き起こすのだという。

景気後退は循環する経済では常に巡って来るものだ。
問題は、それにどう対処するかである。
通常は金融・財政政策により景気後退が深く長くならないように景気を刺激することになる。
しかし、今回は事情が異なる。
まず、金融政策には緩和余地が小さい。
先述のとおり「FRBによる2020年末のFF金利予想は3.5%弱」にすぎない。
では、財政政策なのか。
しかし、これは問題の根本原因の1つだ。

次の経済後退期は、過去のケースより深く長いものとなるだろう。
もしもその時政府が財政政策をとろうとすれば、将来の債務対GDP比率は、100%をはるかに超え、長期金利はさらに上昇するだろう。
それは魅力的な見通しではない。


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