上野泰也氏:米国は日銀を見張っている

みずほ証券の上野泰也氏が、米財務省から17日公表された「為替報告書」を読み込んでいる。
日米TAG協議で「為替条項」がゴリ押しされれば、潜在的な円高リスクを高めかねないと心配している。


米財務省は日銀によるオペレーションの実施状況も含め、その金融政策運営をつぶさにモニタリングしているようだ。

上野氏がReutersへの寄稿で、米政府による日銀の金融政策への関心の高さを示唆している。
日本はこの7年、為替介入を行っていない。
しかし、米国はそれで満足したわけではない。
円安要因となりうる金融政策にも関心が及んでいる。

「驚いたことに、日銀が7月末に緩和策の修正を決めた後、ややパニック的な長期金利の急上昇を抑える(市場心理を落ち着かせる)ために8月2日午後に予定外に実施した4000億円の長期国債買い入れについて、『5─10年の日本国債を36億ドル買い入れた』という表現で、しっかり書かれていた。」

現状の国際社会の建前では
・合意なき為替介入はルール違反
・金融政策は国内政策
との緩い峻別が存在する。
しかし、金融緩和は景気刺激策であるとともに通貨安の要因となる。

異次元緩和が始まった2013年、岩田規久男 日銀副総裁(当時)は講演で、円高修正による輸出増加を異次元緩和の伝達経路の一部として明言している。
日銀は意図しているか否かは別として、円高修正を効果の一部として謳っているのだ。
もちろん、ここで言われているのは「円高修正」であり「円安誘導」ではない。
つまり、程度の問題ということだろう。


リーマン危機が起こった時、比較的傷の浅かった日本は米国のQEに耐えた。
円高ドル安が進んだが、米経済の惨状を目にして、日本はそれを甘受した。
米経済が回復すると、今度は日本が量的緩和を行う番となった。
円高は修正され、経済は一息ついたが、この政策が想定以上に長引いている。
円の実質実効為替レートは安値圏にあり、そろそろ米国から文句が出てもおかしくない状況だった。

米国側の交渉担当者にとって、こうした事情を利用しない理由はないだろう。
極秘裏に何かよほどすばらしい条件でも提示されないかぎり、少なくともジャブとして用いるべき材料なのだ。
もしも、理由なく封印すれば、自国で怠慢を責められてしまうだろう。
だから、ムニューシン財務長官はこれをちらつかせている
そもそも、理屈を無視した外交をゴリ押しする政権だ。
自国が貿易赤字だからといって、貿易黒字国を攻撃する国なのだ。
他国が通貨安だからという理由で、その国の金融政策を批判しても驚くにはあたるまい。

上野氏は、こうした状況もすぐさま円買いに走るべき材料とは考えないという。
しかし、潜在的なリスク要因となりうると指摘している。

為替条項という「地雷」を日本が踏んでしまった場合、円高の流れが強まった際に、それを阻止するために打つべき手が見当たらないという事態に陥ってしまう。


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