ブリッジウォーター:だらだら続く下降のリスク

ブリッジウォーターでレイ・ダリオ氏らと共同CIOを務めるボブ・プリンス氏が、米経済が転換点を迎える可能性に言及した。
市場が混乱しようが米経済は好調というのがコンセンサスだっただけに、投資家は冷静に経済の現状を見直す必要があるのかもしれない。


現在近づきつつある局面では、金融引き締めが、おそらく大きな下降ではないだろうが、より圧力を強めていく可能性がある。

先週プリンス氏が語った現状認識についてFTが伝えている。
トランプ政権も米市場も、足元の好景気に浮かれて、先月まで威勢のいい展開が続いていた。
いまだに歴史的に見れば低金利の環境の中で、景気回復後なのに減税と歳出拡大が行われた。
この政策ミックスで景気が噴き上がるのはある意味で当然のことだった。

しかし、財源のともなわない財政政策はいつまでも続けられるものではない。
また、景気拡大とインフレ上昇はFRBに利上げを促した。
つまり、今後は財政政策の効果低減、金融政策の正常化という政策ミックスになる。
これは、相対的に財政・金融ともに緊縮的になることを意味する。
プリンス氏は株価バリュエーションについて心配する。

株式のバリュエーションには、将来の利益成長について大きな楽観が織り込まれている。
しかし、米経済は今、熱した状態から平凡な状態への潜在的な転換点にある。

セル・サイドの中には、いまだに米国株のPERが20倍を大きく割り込んでいることをもって割安だと喧伝する人がいる。
しかし、これはやや近視眼的な物差しで見た話なのではないか。
プリンス氏が言いたいのはもう少し大きな変化であるようだ。

「今週の出来事は歴史に埋もれていき思い出されることはないだろうが、私たちは明らかに金融緩和の時代から金融引き締めの時代に移行した。
もしも(転換点が)実現すれば、それは単なる1週間だけの出来事ではなくなる。」


S&P 500指数のPERと米長期金利
S&P 500指数のPERと米長期金利

過去35年は景気変動はありながらも、超長期の金利低下局面だった。
上図の長期金利とPERを比べると明らかだが、景気変動によるノイズがありながらも、長期金利とPERは逆行する性質をもっている。
ジェレミー・シーゲル教授が言うように、株価とは利益を(広義の)金利で除したものだ。
金利が上昇すれば、PERが下落するのは理論どおりのことなのだ。
さらに、金利上昇がスピード・アップすると、利益にまで悪影響を及ぼすようになる。

もしも、現在の長期金利上昇が、超長期の金利変動サイクルの転換であるとしたらどうなるのか。
前回の上昇局面は終戦の翌年の2.1%からボルカー・ショックの15%までだった。
この間PERは22倍から7倍まで低下している。
もちろん現状ここまで金利上昇が進むとは予想されない。
しかし、PER 20倍割れが割安という感覚が通用しない時代がやってくる可能性は否定しきれない。
超長期のサイクル転換とはそういう意味合いを持ちうる出来事なのだ。

プリンス氏は、次の景気後退期に対応する政策手段が乏しい点を心配している。
これ以上の財政拡大には限度があるし、FRBが利上げしたといってもFF金利はまだ2%あまりでしかない。
さらに、米社会にはQE 4に対するアレルギーが強いのだという。

米経済には過度なレバレッジがかかっておらず、急下降のリスクはやや緩和されているだろう。
しかし、だらだらと続く下降のリスクは大きくなっている。
どういう政策が米経済をそこから救い出してくれるのだろう?


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