ムニューシン財務長官:米国債は売れない

今週の市場の混乱では金利上昇と貿易摩擦への懸念がクローズ・アップされた。
新たな週を迎える前に、双方に深く関与しているスティーブン・ムニューシン米財務長官の発言をおさらいしておこう。


「中国は米国が経済を見るのと同じやり方で経済を見ている。
だから、心配はしていない。」

中国が米国への報復として保有する米国債を売却する可能性についてCNBCで尋ねられ、ムニューシン長官は答えた。
米国債には多くの需要があり、たとえ中国が買わなくても他にも投資家はたくさんいると強弁した。
中国はFRBを除けば、日本と並んで最大の米国債の投資家だ。
その投資家が手を引くことへの市場の恐怖感が高まっている。
最大の投資家が手を引いても他に買い手が見つかるというのはなかなか信じがたい説明だろう。
仮に消化できても利回りは上昇がさけられず、それが米財政をさらに悪化させることを多くの人が心配している。

そう動けば、明らかに中国は大きなつけを払わされることになる。
彼らが米資産を売却すれば、彼ら自身が大きな損失を被ることになる。

むしろこちらの説明の方が本質を突いている。
中国が買うのをやめ保有分を売ろうとすれば、一度に全部を売るのはもちろん不可能だから、少しずつ売るしかない。
売ることを市場に気取られた瞬間、米国債の価格は下げ始める(=利回りは上がる)。
結果、中国がまだ保有する米国債の価格まで下落してしまう。
(ついでに日本も大きな損失を被る。)


実際これには前例がある。
1997年、当時の橋本龍太郎首相がコロンビア大学の講演後の質問に対し「米国債を売却しようとする誘惑にかられたことは幾度かある」と回答したことがあった。
非常に素直な内心の表明にすぎなかったのだが、米国債価格は下落(=金利上昇)、米国株も下落、円高が進むこととなった。
ムニューシン長官はかつてゴールドマン・サックスのフィクスト・インカム部門で活躍し、共同経営者にまで上り詰めた人物。
この有名な出来事を覚えているだろうから、今回の発言にも自信があるはずだ。

ただし、見方を変えれば、この表明は借金の借主が開き直ったともとれる。
中国も日本も開き直る債務者を避けたいと考えるのは当然だ。
世界の外貨準備は徐々にドル資産を敬遠するだろうと言われている。
時間はかかろうが、ドルは趨勢的に減価していく運命の通貨なのだろう。
(逆に基軸通貨が増価していくと、世界の金融が引き締まり、経済発展の阻害要因にさえなりうるのだから仕方ない。)

その他、ムニューシン長官の主な発言は次の通り:

  • 最近の株価下落は自然な調整。
  • 債券・株式の同時安は正常化への当然の反応。
  • 大統領が低金利を望んでいるのは事実だが、中央銀行の独立性の重要性については理解している。
  • 関税は相互に公正な通商を実現するための重要な交渉のツールだ。
  • 為替は間違いなく交渉のテーマだ。
    「これについて日本を除外していない。」(Reuters

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