ジェレミー・シーゲル:潜在的マイナスを見直せ

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ウォートンの魔術師ジェレミー・シーゲル教授が、連日のように慎重スタンスを強調している。
かつての教授からはついぞ聞いたことのない語り口まで出始めている。


これは心理なんだ。
すべての潜在的マイナス要因を見直してみろ。

シーゲル教授がCNBCで珍しい話し方をした。
《永遠のブル》と愛され、また揶揄されてきた教授が、マイナス要因を重視するような話し方をしたことが、慎重なスタンスを象徴している。
では、なぜ教授は今マイナス要因に注目するのか。
それは、企業収益拡大などのプラス要因がすでに出尽くしているからだ。

「今年は期待をはるかに超えるスーパーな年だった。
しかし、それはすでに株価に織り込まれている。」

米中摩擦の回避など、まだ織り込まれていないものもあるにはあるが、それが実現してもインパクトは限定的だろう。
なぜなら、楽観的な市場心理のために、現時点で大きなディスカウント要因になっていないからだ。
では逆に、なぜマイナス要因を見るのか。
それは、大きなマイナス要因、長期金利上昇がまだ完全には織り込まれていないからだ。

「FRBは再び12月の利上げについてとても積極的な姿勢を示している。
彼らは2019年に3回の利上げをすると言っている。
株式の(債券などとの)競合が強まっている。
S&P 500の配当利回りは1.8%だが(長期債利回りは)倍近い3%台に達している。
(株式保有を正当化するには)キャピタル・ゲインが必須になっている。」


仮にトータル・リターン(インカム・ゲイン+キャピタル・ゲイン)を米国債利回りと比較するのなら、トータル・リターンは米国債利回りより(株式リスク・プレミアム×β)だけ上回らないと有利にならない。
これは、益回りと米国債利回りを比べる時も同様だ。
つまり、株式はリスクがあるがゆえに国債より高いリターンが要求される。
そのリターンが実現しなければ株は売られ、株価が下がることでリターン(率)が上がり、新たな平衡を探すようになる。

昨年まであれほど強気だったシーゲル教授だが、米国債市場の需給悪化が相当に効いているようだ。

「8千億ドルの財政赤字により米国債が市場に流れ込む。
FRBは量的引き締めを行っており、これは米国債を売っていることになる。
これら2つを足すと1兆ドルに及ぶ。
中国は(米国債を)買っていない。
だから国内投資家が1兆ドルの米国債を消化しなければいけないことになる。
FRBは短期側の利上げに積極的で、2.8、2.9、3.0、あるいは3.25%まで行くかもしれない。」

FRB利上げは米国債市場の短期側で価格下落=利回り上昇をもたらしている。
米赤字財政とFRBのバランスシート縮小が長期側で価格下落=利回り上昇の要因となっている。
この明確なロジックと事実が市場心理に効いてくるとシーゲル教授は心配する。

「金利が上昇すると思っていたのにそうならなかった時は、投資家はリラックスできると考えた。
それが今心配していた金利上昇が起こり、株式市場にとって問題になりうると考えるようになった。
・・・この種の心理は意思決定に忍び込み、今四半期を難しいものにする。」

シーゲル教授は年末のS&P 500について、昨年末に語った0-10%上昇予想を据え置いている。
かろうじて楽観を見せたのは、株価調整のいい面(過剰の解消)を語ったことだ。
ブルの片鱗を見せながらも、それには常に警戒がともなっている。

弱気相場入りではない。
いい材料は織り込み済みというだけだ。
あらたな素晴らしい材料、良い材料は見当たらず、潜在的リスクが見えている。


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