ローレンス・サマーズ:米経済の3つのリスク

ローレンス・サマーズ元財務長官(現ハーバード大学教授)が、金融政策を緩和的に維持するようFRBに注文をつけた。
現時点ではインフレのリスクより経済悪化のリスクの方が深刻なためだという。


「FRBは金融政策と実体経済の間のタイム・ラグについて十分に気を配るべきだ。」

ハト派の論客 サマーズ氏がCNBCでFRBに注文をつけている。
FRBはこのところ四半期に1度25 bpsずつ利上げを行っている。
利上げが経済を冷ます効果にはタイム・ラグがあり、あまり続けて利上げしすぎると景気をオーバーキルしかねないというのだ。
サマーズ氏は、このタイム・ラグが米経済に直接影響を及ぼすだけでなく、まず世界経済に影響を及ぼし、それが再び米経済に戻って来る点にも注意すべきという。

サマーズ氏はFRBの2%物価目標にも注文をつける。

「米経済は10年に及ぶ景気拡大にあるが、その10年の大部分で目標を下回ってきた。
もしも(物価目標の意味が)平均2%の目標であるとするならば、今後しばらくは2%超に置いておかなければならない。
全力を尽くしても景気後退はやってきて、そうなればインフレは下がってしまう。
インフレは昂進しないだろうし、2%は平均であるべきであって、許容可能なインフレを示す天井であってはいけない。」

サマーズ氏は従来の物価目標にかえて物価水準目標にすべきと主張しているのだ。
よく言えば前向きな議論であり、悪く言えば論理のすり替えだ。
当然のことだが、FRBの2%物価目標は(オーバーシュートを許すとしながらも)物価目標であって、物価水準目標ではない。
ベン・バーナンキ元FRB議長が物価水準目標を提唱した時、同氏は正々堂々政策変更として行うことを前提としていた。
実際、物価水準目標の採用についてはFRB高官の中にも好意的な意見がある。
一方、サマーズ氏の場合、過去にさかのぼって解釈を変えようという言い方になっている。
この手続き論では採用の可能性は生まれえまい。


サマーズ氏に無理筋を言わせるほど、同氏の焦りは強い。
現在のリスクはインフレではないとし、2つ理由を挙げる:

  • インフレはほとんどの場合ゆっくりと進む。
  • 技術革新、グローバリゼーション、新規参入による競争がディスインフレ的な力を及ぼしている。

では、サマーズ氏は何を目下のリスクと考えるのか。
同氏は3点を挙げる:

  • FRBが景気をオーバーキルしてしまう。
  • 市場の自己満足。
  • 地政学的リスク。

この天才児は、インフレのリスクがないとする一方、資産インフレのリスクについては大いに心配している。
さらに、だいぶ前からバブルを崩壊させるべきか否か悩んできているのである。

2つ目は2006-07年や1999-2000年のような自己満足だ。
自己満足とは自己否定的な予言であり、それにより人々はお金を借り過ぎ、使い過ぎ、資産価格が過大になり、最後には買い手がいなくなる。
急激に上昇し巻き戻すプロセスであり、大きな資産価格下落に直面することになる。
それは経済に比べて資産の価値が高まった時から始まる。

経済と資産の価値が乖離する、つまりバブル発生のケースは2つある。
資産価格が上昇するか、経済が悪化するかだ。
サマーズ氏は、米経済の先行きについて短く予想している。

来年景気後退入りするとは考えていないが、今後数年で下降に入ってもおかしくない。


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