ソロス・ファンドのスピン・アウトを深読みすれば

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ジョージ・ソロス氏のソロス・ファンド・マネジメント(SFM)がプライベート・エクイティ(PE)のチームをスピン・アウトするとBloombergが伝えている。
この時期に未公開株ファンド事業を切り離すのにはどのような意図があるのだろうか。


SFMのドーン・フィッツパトリックCIOは今回のスピン・アウトについて次のように社内にアナウンスしたのだという。

「私たちは、ポートフォリオの構成、流動性、リスク配分、投資期間に関してSFMの投資アプローチの戦略的変更を実施してきた。
PE事業の一部スピン・アウトはこの変化の結果だ。
あらたな構成の下、両社は15年にわたり成功を収めてきた協力の恩恵を受け続けることになるだろう。」

実は、SFMがPEを切り離すのは今回が初めてではない。
2001年に立ち上げたチームは2005年に切り離され、現在ではTowerBrook Capital Partnersとなっている。
それと同時に別のPEのチームがテコ入れされ、今回切り離されるのはそのチームだ。
SFMのPE事業の大半を占めるとされるが、一部はSFMに残るとも伝えられている。

ソロス氏は昨年まで数年をかけてSFMへ出資する資産の所有を自身が代表を務めるOpen Society Foundations(OSF)の所有に移している。
かつてはSFMはソロス氏(と家族)の財産を運用する役割だったが、今は主にOSFの財産を運用する立ち位置に変わっている。
今回スピン・アウトするPE運用チームは運用資産を引き継ぐため、引き続きOSFの財産を管理・運用することになる。
さらに、他の出資も募るというから、いくらかソロス氏への依存度を減らしていくのだろう。


スピン・アウトとは資本関係を残さない切り離しだ。
だから、SFMは今回そのほとんどのPE事業から撤退し、ほとんどのPE資産を運用資産から外すことになる。
では、その狙いは何か。
これが、フィッツパトリックCIOの言うとおり「投資アプローチの戦略的変更」であるならそれは何なのか。
「ポートフォリオの構成、流動性、リスク配分、投資期間」にヒントがあるのだろう。

SFMは2001年にPEにエントリーしている。
これはドットコム・バブル崩壊後にあたる。
その後2005年にエグジットしている。
これはサブプライム危機の2年前だ。
(つまり、リスクが蓄積している真っただ中だ。)
ソロス氏は、市場サイクルの中で、流動性の入手可能性に注目しているのではないかとの勘繰りが働く。
言い換えれば、ソロス氏は流動性が潤沢な時期にPEをやりたいのだ。

景気拡大期の後半、金融政策がまだ緩和的な時、流動性は最も潤沢になる。
その後、金融引き締めが始まり、資産価格はまだ上昇しているものの、流動性は徐々にタイトになっていく。
そして、金融引き締めが景気をオーバーキルしてしまい、資産価格は下落に転じる。
PEは、未公開株であるがゆえに流動性が低い。
上場株式のように評価額を日々切り下げる必要はないが、市場全体の流動性がタイトになると場合によっては売れなくなってしまうこともある。
足元を見られてしまい、まともな価格で買ってくれる買い手がいなくなってしまうのだ。

こうした勘繰りがあたっているのなら、投資家にとってはあまりいいニュースではない。
ソロス氏が(余裕をもって)金融市場の反転を予想し、市場の流動性枯渇に向けて手を打ち始めたことを意味するからだ。


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