ロバート・シラー:企業収益に対する健全な懐疑心

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資産価格の実証的研究で2013年ノーベル経済学賞を受賞したロバート・シラー教授が、企業収益は急変しうると警告している。
PERが変わらず、企業収益が拡大するからといって、その強気相場が安全とは限らないのだという。


「利益は変動が激しいことを留意すべきだ。
突然の急上昇は数年のうちに反転する傾向にある。
米国株市場の歴史において1ダース以上数えるほど劇的に起こってきたことだ。」

シラー教授がProject Syndicateへの寄稿で書いている。
株価上昇が利益上昇とともに起こっている(≒PERが大きくは変わっていない)からといって安心すべきではないとの警告だ。
リーマン危機後の底からの強気相場についてもそうだが、なかでも教授が危ぶんでいるのはトランプ・ラリーの部分だ。

大恐慌への道のり

超一流の行動経済学者の昔話はいつも面白く、想像力をかき立てる。
シラー教授は、企業収益について市場が冷静だった時期とその冷静さを失った時期を紹介している。

市場が冷静だったのは1914-16年。
利益は2.6倍になったのに株価は16%しか上昇しなかったという。
この利益の急拡大が戦争特需によるものであり持続しないと、市場が見たためだ。
また、戦争で儲ける企業家への批判が高まり、超過利潤税の導入にもつながっている。

ところが、その後に迎える狂騒の1920年代には、市場は慎重さを失ってしまう。
不況が終わった1921年から1929年にかけて実質ベースの利益は5倍超に拡大。
それにつれ株価は4倍超に上昇したという。
言うまでもなく1929年は株式市場を「暗黒の木曜日」が襲った年であり、大恐慌が始まった年である。

ナラティブが結果を分ける

シラー教授は、対照的なこの2つの期間でナラティブ(物語)がどう違ったのか自問する。
前者は戦争という(企業収益にはプラスだが)暗いナラティブであり、後者は戦争の終わり・自由という明るいナラティブだった。
明るいナラティブが株価上昇をおびき出したが、結局は企業収益と株価はともに急落したのだ。

シラー教授の話は《根拠なき熱狂》後に移る。
1982-2000年は、利益成長(2倍)を大きく超える株価上昇(7.5倍)の時期となり、それはドットコム・バブルの崩壊で終わっている。
2003-07年はドットコム・バブルへの反省から株価上昇こそ控えめだったのだが、今度は住宅市場でバブルが発生し、株式市場もその崩壊の余波をもろに受けている。
そして現在の強気相場がやってきた。

(次ページ: 過去のパターンと一致している)


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