臼杵政治教授:ドルコストやライフサイクルファンドの幻影

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名古屋市立大学の臼杵政治教授が、金融商品で一般的に用いられている2つの投資手法について実証的に有効性を検証している。
結果、行動ファイナンス的な利点はあるものの、さしてリターン向上には役立たないと結論づけた。


日本の家計のリスク資産投資が十分に進んでおらず、老後の備えとすべき金融収益が得られていないという課題が指摘されている。
その課題に対処する知恵として実務家が推奨しているのが、二つの投資手法―ドルコスト平均法とライフサイクルファンド、である。
しかし、アカデミアの世界ではこの二つの手法に批判が多い。

臼杵教授が証券アナリストジャーナルに書いている。
要するに学者たちはドルコスト法とライフサイクルファンドが嫌いなのだ。
もっとも、ここで「実務家が推奨している」とされている「実務家」とは、せいぜい証券会社、投資顧問、金融庁ぐらいであろう。
投資理論を学んだ実務家なら、これらの手法が投資リターンにプラスに働くものではないことを承知しているはずだ。

(以下、株式リスク・プレミアムがプラスの市場を仮定する。)
投資の期待リターンとは基本的には「延べ投資額(1期間当たり投資額×期間数)」で決まる。
マーケット・タイミングの神様でない限り、


  • 持ち金をすべて一度に投資しても(一括投資)
  • 定額で積み立てるように投資しても(ドルコスト)
  • 高齢になるにしたがいリスク資産を減らしても(ライフサイクルファンド)

期待リターンに本質的な違いはない。
(マーケット・タイミングの神様ならタイミングを見計らっての一括投資が有利なのは言うまでもない。)
期待リターンの違いは単にそれぞれで延べ投資額がどうなるかによって決まる。
もしもすでに現金がたくさんあるのにドルコスト法を用いれば、延べ投資額が(一括投資より)小さくなる分期待リターンは小さくなる。
年120万円のNISAと年40万円の積立NISAを比較するなら、お金を持っているかぎり前者を選ぶべきだ。

リターンを改善するという意味ではあまり意味のないドルコスト法・ライフサイクルファンドだが、臼杵教授によれば、決していい面がないわけではないという。

「効率的市場を前提にすると、定期的かつルールに基づく積立、すなわち一定のルールを自らに課すこと(コミットメント)には、近視眼的損失回避や利用可能性ヒューリスティックなど様々なバイアスの投資行動への影響を抑制する意味がある。」

利益に対する喜びより損失に対する悲しみの方を大きく見てしまう人間の性質、あるいはそれ以前の話として、積立していないとお金を浪費してしまう人もいるのかもしれない。
そういう問題に対処するには、こうした手法も意味があるのだろう。


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