アデア・ターナー

 

統合政府というポンジ・スキーム

執筆:

英金融サービス機構の元長官で、以前から日本にヘリコプター・マネーを勧めてきたアデア・ターナー氏が、日本の財政状況に太鼓判を押している。
ところが、そのロジックがどうにも危険極まりないものなのだ。


日銀はGDPの90%に相当する国債を保有し、最終的には政府から受け取った保有国債の金利はすべて国庫納付金として国に返すことになる。
政府保有の金融資産と政府と国民が自身に対して負っている債務を連結消去すると、債務レベルは60%に過ぎず、上昇していない。

ターナー氏がProject Syndicateで典型的な《統合政府》の詭弁を展開した。
この議論が意図的に看過しているのは言うまでもなくマネタイゼーションによる日銀の負債である貨幣の増大である。
短期的には問題とならなくても、長期的には通貨の価値の下落を引き起こしつつあるこの問題を《統合政府》論者はあえて触れない。
悪意をもってこうする人は問題を理解しているのだろうからいいのだが、それを鵜呑みにする人たちは厄介だ。
問題の本質を知らず、筋の悪い新興宗教にはまり込んでしまう。
ターナー氏の詭弁はこうだ。


「ある国がGDPの250%にあたるグロス債務、(保有金融資産と相殺して)150%のネット債務を保有し、中央銀行がGDPの100%にあたる国債を保有しているとすると、(政府と中央銀行連結では)ネット50%の債務が残る。
インフレと実質成長がそれぞれ1%、よって名目GDPが2%で成長すると仮定しよう。
債券利回り2%(日本の現状は0.1%)とすると、仮に政府が毎年GDP比4%のプライマリー・バランス赤字、財政赤字5%だと仮定しても、債務比率は安定する。」

これが成立しうるなら税金など要らない

すばらしい。
それならば、税などはいらないではないか。
日本の一般会計税収は60兆円と名目GDPの10%を少し超える水準だ。
この税金を恒久的にゼロにしてしまおう。
1年目:
グロス債務260%、ネット債務160%、中央銀行保有分110%となり、統合政府ネットで50%の債務と変わらない。
問題はフローだが、ターナー氏の議論は初めから政府債務拡大による財政インフレのリスク要素を無視している。
(むしろインフレは債務の実質負担を減らしてくれると歓迎しているのだろう。)
実質成長は減税とともに上昇するかもしれないが、それは債務比率には影響しない。

つまり、ターナー流で言うならば、国家が税収を放棄してもマネタイゼーションを続ける限り持続可能となる。
ならば、みんな何でこれをやらないのか。
まず、ターナー氏がこれを奨めるべきはBrexitに苦戦する母国 英国であろう。

(次ページ: 露呈する論理矛盾)


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