加藤出氏:円安依存リスクは最悪期に発現する

東短リサーチの加藤出氏が、出張で訪れた大阪を散策しながら「インバウンドバブル」を痛感したのだという。
実体経済に関する加藤氏の話を金融経済にも拡張してみよう。


「日本ならでの安全、高品質な商品や食事を彼らが求めてやって来ているのは確かだが、ベースにあるのは円安だ。
・・・円安でなければ、彼らは日本であんなに大胆に買い物はできない。」

加藤氏が週刊ダイヤモンドで、アジアから来日する観光客の動機を推測している。
もちろん動機が何であろうと、来日しお金を落としてくれるのはありがたいことだ。
しかし、その条件が円安というのでは少々厄介だ。
円安で来る人たちは円高では来なくなってしまう。
そこが、ユーロ高でも観光客を引き寄せ続ける「シャンゼリゼ」との違いだという。

円安頼みの経済には問題も大きい。

裏を返せば、日本国内に住んでいる人は、円高故に高いガソリン、電気、ガス、輸入食品を買わされている。

当然のことだが、円安は輸出産業に有利であり、輸入産業や家計には不利な現象だ。


賃金は上がりにくく家計への重しに

「せめて今のうちに円安でもうかっている企業が社員の賃金やボーナスを引き上げてくれればよいのだが、企業経営者は慎重だ。
・・・トヨタ自動車の豊田章男社長はコストカットがトヨタの真骨頂だ、とあらためて経費削減をアピールしていた。」

日銀の今年4月の展望リポートでは、輸出の為替感応度が低下していると指摘されていた。
円安になっても数量ベースの輸出が増えにくくなっているのである。
つまり、円安になっても増産につながりにくく、労働者(つまり家計)への分配は増えにくい。
一方、価格への圧力が緩む分利ざやは拡大し、企業収益が改善しやすい。
その意味で、円安が輸出産業にとってプラスなのは間違いない。

一方で、輸入物価は上昇するから、輸入産業や家計にはマイナスとなりやすい。
それで国内消費が陰れば、国内経済にとっていいとは言いがたいだろう。
加藤氏は、円安依存の景気回復には限界があると主張している。
思えば、だからこそ日銀も1ドル125円近辺で円安誘導からUターンしたのだろう。
加藤氏は「円高を過度に恐れないで済む経済の構造にシフトしていく必要がある」と書いている。

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