佐藤元彦氏:なぜ30・40年債まで買うのか

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明治安田生命の佐藤元彦氏が、日銀のイールド・カーブ・コントロールについて論じている。
サプライズ利上げ(長・短)に備えて考えておきたいテーマだ。


「日銀は2年債や5年債も買っていれば、30年債や40年債も買っているのである。
これをどう考えればいいのであろうか?」

佐藤氏が証券アナリストジャーナルに書いている。
書かれたのは7月の日銀政策決定会合前なのだが、風化させるべきでない問題提起であり、少し多めに紹介しよう。

退屈な雑誌に例外が

余談になるが、証券アナリスト協会会員に配布される「証券アナリストジャーナル」は月刊誌。
実にリーダブルな記事が少なく、筆者などはほとんどの月で目次と書評欄だけに目を通し捨ててしまう。
ギルドの会報であるにもかかわらず、アカデミックなスタイルを取り込もうとした弊害だろう。
正しく統計等を駆使して結論を導き出した結果、つまらない記事になってしまうのである。

そもそも投資や財務にかかわる評価・分析・提言というものはあまり学問的ではない。
(行動経済学は唯一の例外のように思う。)
そこに学問的な手続きを持ち込み過ぎると、どうしても擬似科学的な怪しさを帯び、いっそう読みたくなくなってしまう。
かと言って、そうした基準を取り除いた結果、近視眼的な噂話ばかりになってしまっても困る。
そこで、たいして文句も言わず、ただ毎月捨ててきたし、今後もそうするのだろう。

イールド・カーブ・コントロールの問題点

ところが、その9月号には2本も面白い、かつ読む価値のある記事があった。
証券アナリストと言ってもその業務範囲は幅広いから、そのジャーナルに2つも興味をそそられるというのは画期的なことだ。
その1つが佐藤氏の寄稿「適切なイールドカーブを求めて」である。
日銀のイールド・カーブ・コントロール(YCC)に関する意見なのだが、佐藤氏が議論しているのは、YCCの持続可能性・適切性ではない。
佐藤氏が議論しているのは、日銀が明確で妥当な意思をもって実現すべきイールド・カーブを決定しているのかという点だ。
具体的には3点を問題視している。


  • 0%と設定されている長期金利ターゲットにはある程度の自由度が持たされているが、日銀は具体的にその幅を明示していない。
  • YCCと言っているが、明示しているのは短期と10年だけで、その間や超長期について考えを示していない。
  • 10年債だけでなく、2年、5年、30年、40年債などイールド・カーブ全体にわたって買っている。

総じて言うならば、日銀がどのようなイールド・カーブ(短期から超長期)を理想と考えているのかがあいまいで、かつオペレーションの指針もあいまいになっているとの指摘なのだろう。

日銀は確信犯

佐藤氏はYCC導入直前に行われた「総括的検証」から引用する。

実質金利の低下は、経済・物価にプラスの影響をもたらす。
もっとも、その度合いは、金利の年限によって異なる。
一般的には、短期?中期の金利の低下による効果がより大きいと考えられる。
企業や家計の資金調達に占めるこのゾーンのウエイトが大きいためである。
この点について、自然利子率の概念を、特定年限の金利ではなくイールドカーブ全体に拡張した「均衡イールドカーブ」の概念を用いて、年限ごとに実質金利の低下が需給ギャップを改善させる効果について分析を実施した。
その結果、実質金利1単位の低下が需給ギャップに与える影響については、1-2年がはっきりと大きく、年限が長くなるにつれて小さくなることが分かった。

佐藤氏の意図は明確だ。

「この文章を素直に読むならば、短期以外の固定ポイントは3年、長めにとっても5年というところではなかろうか?」

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