ケネス・ロゴフ:経済は回復した

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元IMFチーフ・エコノミスト Kenneth Rogoffハーバード大学教授が、景気の現状・先行きについて解説している。
国家は破綻する』の著者が先進国経済について、ずばり金融危機再発の有無を占っている。


経済成長は終わったという考えに市場はとらわれ過ぎてきた。
趨勢的停滞というアイデアを私の同僚ローレンス・サマーズが強く植えつけすぎたんだ。
私たちは金融危機を経験し、そこから抜け出すのに10年を要したが、ついにそれは終わったんだ。

ロゴフ教授がCNBCで力強い米経済の回復を宣言した。
リーマン危機があまりにも過酷な経験だったため、米経済は自信を失っていた。
趨勢的停滞、New Normalなどという言葉がさかんにメディアで取り上げられた。
しかし、皮肉なことに自信を取り戻してくれたのは、セオリーの真逆を行くような大統領だった。

21世紀の趨勢的停滞論を唱えたサマーズ氏は、いまでも趨勢的停滞が続いていると主張する。
同氏による趨勢的停滞の定義とは、持続不可能な政策なしには回復しない経済であるためだ。
確かに現在の米景気を支えるのは非伝統的金融政策と異例の財政政策だ。

一方、ロゴフ教授は以前、量的緩和政策について興味深い意見を述べたことがある。
量的緩和は誰も気にしなければ薬にも毒にもならないという意見である。
この見方からすれば、注意すべきは利上げであって、量的緩和巻き戻しは無視しうるということになる。
量的緩和政策は期待に働きかける効果を除けば効果がないことを含んだものであり、バーナンキのジョークのとおりだ。
ただし、量的緩和の巻き戻しが国債市場の需給悪化を通して長期金利を上昇させるのであれば、これは短期の政策金利の利上げ以上のインパクトになる。
そうであれば、量的緩和という《持続不可能な政策》はまだ存在することになる。


ロゴフ教授は現在の米景気が本物であり、労働市場も引き締まり、生産性にも改善の兆しが見られると指摘する。
もちろん、景気とは循環するものだ。
景気が改善すれば中央銀行は金融緩和を解き、景気が過熱すれば金融引き締めに転じる。
その大きな判断要素がFRBのデュアル・マンデートの1つである物価だ。
インフレが昂進すれば、FRBの引き締めスタンスが強まっていく。
すでに、米コアCPIは2%を超えている。
政策金利は着実に(景気を刺激も抑制もしない)中立金利に近づいている。

ロゴフ教授は、労働市場が完全雇用に近く経済も強いのに賃金上昇が起こらない現状を率直に驚いている。
賃金上昇が穏やかだからインフレが昂進しない。

「これが続くかと言えば、続かないと見ている。
米国の好景気は続くと見ており、最後には賃金は上昇するだろう。」

ロゴフ教授は好景気がまだしばらく続くと考えているから、そのうちに賃金が本格的に上昇を始め、それがインフレに転化すると考えている。
しかし、そのシナリオはかなり緩やかなものを想定しているようだ。

「ベスト・ケースは少なくともあと数年(好景気が)続いて、FRBがさらに利上げしなければいけなくなることだろう。」

あと数年好景気が続くなら、FRB利上げが景気をオーバーキルするのも先になるのだろう。
数年たてば少しは構造的な変化も起こり、中立金利もいくらか上昇するかもしれない。
ロゴフ教授は、現状の長期・超長期金利について想定より低いことに肩をなでおろしている。
その上で、先進国経済のリスクはそう高くないと話している。

10年金利も上昇すると予想しているが、おそらく今後数年で0.75%程度の上昇となるだろう。
・・・
明確にしておきたいのは、景気後退はやってくるが、今回は先進国で深刻な金融危機は予想されないということだ。


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