レイ・ダリオ:長期債務サイクルは最終局面

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Bridgewater AssociatesのRay Dalio氏が、現在の経済の局面を短期・長期の両方の視点で説明し直している。
ダリオ氏の経済観や将来予想を端的に示しており興味深い。


これらの理由や富と機会の格差の大きさから、短期よりも数年後の見通しについて心配している。

ダリオ氏が自身のSNSで中期的な経済・市場環境について懸念を述べた。
その根拠は近著『Big Debt Crises』、オリジナル・ビデオ『30分で判る 経済の仕組み』で述べられた経済モデルに忠実に現状の経済を当てはめたものだ。
具体的には、現在の景気変動を長期と短期の債務サイクルに分けて分析している。

短期債務サイクル拡大はまだ数年続く

債務拡大、あるいは信用創造は経済成長の重要な要素だ。
だからこそ、政策金利を上下することで実施される金融政策の存在意義がある。
ダリオ氏は、短期債務サイクルの拡大期が通常7-8年(±数年)続くと述べている。
現在の景気拡大期は史上最長に近づいているが、景気拡大が長くなる理由は経済に存在する「たるみ」にあるのだという。
前回の景気後退期が深くその後の成長が鈍いと、経済にたるみが生じ、景気拡大が長くなる傾向があるという。
ダリオ氏の現状認識はこうだ。

ほとんどの先進国の短期債務サイクル(景気サイクルともいう)は6-7イニングにあり、収縮局面にはない。
・・・
前回(の景気収縮)は深く、成長は比較的鈍く、所得の伸びに比べて債務拡大が高くなく、現在存在する供給制約が危険な高インフレ・急速な引き締めにつながらないため、まだ数年のサイクル拡大が残っているように見える。


「数年」というのは2年以上と考えてよかろう。
景気後退入りより株式市場のピーク・アウトが1年弱先行すると仮定すると、株式市場はまだ1年余り上昇する可能性がある。
通常これは《最後のひと上げ》となり、比較的急激な上げになるが、ダリオ氏は最近「アップサイドは限定的」とも語っている。
すでにリスク=リターンは悪化し始めているという。

長期債務サイクルにしたがい各国財政は逼迫へ

ほとんどの先進国の長期債務サイクルは最終局面にあり、各国の債務管理は困難になってくるだろう。
金融債務と非金融債務(年金・医療保険)全体の負担は大きくかつ増えており、中央銀行が(景気)収縮を打ち消す能力は限られている。
(金利引き下げ余地は限られており『量的緩和』により経済成長を絞り出す能力も限定的だ。)

ダリオ氏の長期的見通しは暗い。
長期的な金利低下によって債務拡大をまかなう局面は終わりつつあり、金利上昇が本格化すれば約定の履行が困難になっていく。
一方で格差拡大からポピュリズムが台頭、財政再建が難しい社会情勢にある。
各国の金融・財政政策が伸びきってしまったのも、ダリオ氏にとっては必然に見えているのだろう。

ダリオ氏の予想があたるとし、弱気の源泉が長期債務サイクルであるとするなら、その根は深く、かつ長く続くことになる。
ダリオ氏は次の景気後退について、だらだらと継続し債務危機というよりドル危機になるだろうと予想している。
リーマン危機とは金融商品で言えばMBSとその仕組み商品の市場の崩壊だった。
今回積み上がっている主役は米国債だろう。
世界経済が続く限り、逆に言えば当面は米国債は崩壊できない。
だらだらと下がるしかなく、それは米ドル安を連想させる。


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