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加藤出氏:2%未満のインフレを悪とする迷信
2018年9月10日

デフレ期は不幸な時代?

経済・金融分野の実証研究の神様、ロバート・シラー教授は以前、ある程度の物価目標を設定することは妥当だと話したことがある。


「ジャネット・イエレンは理想的インフレ率の分野で影響力のある人物だ。
理想的インフレ率はゼロではなく、たとえば2%程度であるというものだ。
その理由の1つは、歴史が示している。
デフレの時期は経済が弱かったんだ。」

(19分30秒以降の部分)

この意見は傾聴に値するが、シラー教授が観察したデータセットがはっきりしない。
おそらく米国の2世紀余りなのではないか。
また、デフレと経済停滞の因果関係を明らかにしたものでもない。
デフレが不幸をもたらしたのか、不幸がデフレをもたらしたのかはっきりしない。

英国はディスインフレの中で黄金期を迎えた

加藤出氏は英国の物価の歴史を解説した『The Great Wave: Price Revolutions and the Rhythm of History』という書籍から英国のファクトを紹介している。
英国では1200年代終盤から1900年の600年で物価が約10倍になったのだという。
これは年あたりにすると平均およそ0.38%と、現在の日本並みのディスインフレだ。
かと言って、この600年が英国にとって暗黒の世紀であったというわけでもない。
最後の100年あまりは大英帝国の黄金時代だ。
むしろ、英国が暗黒の時代を迎えたのは、20世紀に入り凋落が顕著となりインフレが高まってからだろう。

時間と空間を広く取れば結論は変わるのか

もちろん、かつての英国の低インフレの背景には通貨制度も影響しているのだろう。
金貨や金本位制度の時代ならインフレが高まりにくいのは当然のことだ。
しかし、結果から言えば、繁栄に必ずしもインフレは必要なかったのだ。

米国は米国、英国は英国、日本は日本だ。
それだけに世界標準という議論は説得力に劣る。
加藤氏は書いている。

2%よりも低いインフレ率は『悪』であるかのような論調が近年は多いが、実はそういった考え方はほんのここ数十年間の議論にすぎないことが、歴史をひもとくと見えてくる。

為替の呪縛にとらわれた人たち

なお、各国間の物価目標に差異があると為替に影響が及ぶとの論調もある。
しかし、少なくとも足元の円の実質実効為替レートを見る限り、円レートはかなりの円安水準にある。
かりに日本が他国より1%程度低い物価目標を設定し、それが10年で10%の円高となったところで(絶対的な意味で)円高とは言えない。
日銀もすでに輸出の為替感応度が低下している点を指摘している。
さらに言えば、物価目標がどこにあろうと、実際にインフレが起こらないなら為替への影響はたいして変わらないだろう。


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