加藤出氏:2%未満のインフレを悪とする迷信

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東短リサーチの加藤出氏が、2%物価目標の是非を問い直すべきと主張している。
物価上昇が国民生活を圧迫するとの考えはあるのに、政府・日銀は2%目標を聖域として見直す構えを見せていない。


2%のインフレ目標は本当に『物価の安定』なのか。
それは適切な目標なのか。
そうした議論はもっと広範囲に行われてもよいのではないかと思われる。

加藤氏は週刊ダイヤモンドで持論を繰り返した。
2%目標をすぐさま否としているのではない。
なぜ2%が必要なのか、その優先順位はいかほどなのかを考えろと言っているのだろう。
日銀は実にクレバーにステルス・テーパリングに努めているが、それでも日銀のバランスシートは拡大を続けている。
これは将来の困難・リスクを大きくする。
その代償を払い続けても2%に固執すべきなのだろうか。

インフレに世界標準はあるか

2%物価目標がこれまでのところ世界標準であるのは間違いない。
しかし、世界標準だからといって、そのまま追従すべきという話にもならない。
その国々には固有の歴史・背景があり、すべて横並びにすべきというわけではない。
余談になるが、筆者は移民政策の緩和に賛成だが、だからと言って、すぐに欧米並みまで緩和すべきとは思わない。
欧米が国境を閉ざしつつあると言っても、総合的に見れば日本の移民政策はいまだに閉鎖的だ。
それをすぐさま悪とするのはおかしい。


そもそも、異なる通貨についてインフレを同レベルにしろと言うなら、まず、通貨や金利を統一・同一化するのが自然な道ではないか。
あるいは、世界標準の《望ましいインフレ水準》があるのなら、世界標準の《望ましい金利水準》もあるはずであり、それもまた目標とすべきではないか。
統一通貨をいただくユーロ圏をみると、それでもインフレや金利はマチマチだ。
こうした現実を見ても、インフレを世界標準に誘導しなければいけないというのは少々奇妙だ。
特に、2%インフレは潜在成長率も為替レートも関係なく語られる《標準》だ。
せめて、テイラー・ルールぐらいの簡単な方程式でそのあたりを勘案してほしいところだ。

説得力を失うリフレの論理

2%インフレが金融政策にとってプラスであることは間違いない。
ある程度のインフレは実質金利をマイナスにする助けになり、ゼロ金利制約を緩和してくれる。
これは事実だが、しかしそれも程度の問題だ。
中央銀行のやりやすさと国民の幸せをシビアに天秤にかけるとしたら、優先されるべきは国民の幸せだろう。
だから、中央銀行はいつもこの2つを天秤にかける努力をしなければいけない。
これまでのところ、2%物価目標(≒中央銀行のやりやすさ)ばかりが重んじられているように見えなくもない。

インフレが消費・投資を促すという議論もまったくの誤りではない。
支出を先延ばしすれば高い価格を支払わなければならないと考える人もいるだろう。
しかし、少なくとも日本の家計について言えば逆のことが起こっている。
消費性向の高い中間層以下では、インフレやインフレ期待に対して消費を控えようとする傾向がある。

(次ページ: インフレと繁栄の関係)


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