ジム・チャノスのTesla退職者リスト

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米電気自動車大手Teslaの株価下落が凄まじい。
それが単に株価だけの問題でないことが、Kynikos AssociatesのJim Chanos氏のリストで明らかになった。


チャノス氏はかつてエンロンの不正会計を指摘し、同社株を売り崩したことで有名だ。
そのチャノス氏がTesla株を無価値と考え、長い間ショート・ポジションを維持してきた。
自身のようなショート・セラーを「資本市場の捜査官」と表現するなど信念の人だ。
信念に基づく空売りだから、ちょっとやそっと逆方向に振れても簡単にはあきらめない。

そのチャノス氏が、この1年でTeslaを退職した人材のリストを作っている。
開示・報道等から作られたもののようだが、その集計をCNBCが伝えている。

チャノスによれば、2018年に全部で41人の幹部がTeslaを去った。
過去12か月だと58人だ。
同社は6月に少なくとも従業員の9%をレイ・オフし、同月13名の幹部も会社を去った。

2017年末の総従業員数37,543名に対して41人や58人という数字はどの程度の重要度なのだろう。
そこでCNBCは41人の一部を氏名付きで列挙している。

  • Jon McNeill: グローバル販売・サービス担当社長。
  • Eric Branderiz: 最高会計責任者
  • Dave Morton: 最高会計責任者。就任から1か月で辞任
  • Susan Repo: 財務責任者兼財務担当副社長
  • Jim Keller: 自動運転担当副社長
  • Matthew Schwall: 実地性能技術担当役員
  • Cal Lankton: エネルギー販売・執行担当副社長
  • Karim Bousta: 世界サービス担当副社長
  • Yannick Roux: 製造担当役員
  • Paul Lomangino: 技術担当役員
  • Doug Field: 元技術責任者
  • Jeff Risher: 法務担当役員兼知的財産訴訟担当弁護士
  • Gaby Toledano: 人事責任者。休職を延長中
  • Sarah O’Brien: 広報担当副社長

それぞれの権限を見る限り、どうやら尋常な事態ではなさそうだ。
これほど組織ががたつく時、その理由は主に3つ考えられる。


  • 経営に何か重大な問題があり、役員・従業員が会社を見捨てつつある。
  • 過去の不正・やり過ぎを見て見ぬふりをしてきた人たちが、船が沈みつつあることを悟り逃げだしつつある。
  • その両方。

Teslaの迷走は、最近の非公開化騒ぎだけを見ても明らかだ。
Elon Musk CEOは、MBOによる非公開化をTwitterで公表し、資金の手当てもついていると明言した。
しかし、その後、資金の手当ては確かなものではないことが判明し、非公開化自体が検討中にすぎないことが明らかとなる。
株価は急落し、マスク氏と同社はSECの調査対象となり、民事訴訟の被告となった。
今後は、これまでマスク氏がTwitter等で約束してきた資金繰り・損益に対しても厳しい目が向けられることになろう。

Tesla株価
Tesla株価

8日にも、マスク氏はラジオ番組出演中にマリファナを吸引したと取れる発言をした。
ラジオ局のあるカリフォルニア州ではマリファナは合法化されているが、公開企業のCEOとして適切な姿勢ではないとの批判を浴びている。
これにともない同社株は一時10%程度急落した。

TeslaとマスクCEOの問題は、1企業・1個人の問題だ。
しかし、これは投資家にいやな連想を促す。

チャノス氏は最近、投資家や社会がシリコン・バレーに対してあまりにも寛容すぎるとし、今後は不正発覚が増えるだろうと予想している。
これは、2000年のドットコム・バブルの崩壊過程でも見られた現象だ。

企業への寛容を招いた一因は間違いなく非伝統的金融政策だ。
(ドットコム・バブルの背景にも米国に集まるマネーがあった。)
それは過剰流動性の危うさにとどまらず、寛容になった投資家の姿勢を通して、企業経営の規律までも緩めてしまう。
ところが、これは流動性の減少とともに逆回転を始める。
テスラは氷山の一角ではないか、そう考える投資家が増えれば、これは1企業・1個人の話ではなくなってしまう。


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