ジェフリー・サックス:米ドルを凋落させる政権

コロンビア大学のジェフリー・サックス教授は、米ドルの基軸通貨・準備通貨としての特権が失われつつあると危機感を呈している。
過去の米国自身の失策が原因であり、トランプ政権も大きな間違いを犯しているという。


世界の企業・政府がウォール街ではなく上海に駆け込んで人民元建て債券を起債するようになるまでどれだけ時間があるだろうか?

サックス教授がProject Syndicateに書いている。
米国は米ドルが基軸通貨とされていることで多くの恩恵を受けているのに、自らの失策によってその有利な立場を失いつつあるとの危機感だ。
教授は基軸通貨であることのメリットを大きく3つ挙げている:

  • 海外から自国通貨建てで資金調達
    自国通貨建てであれば、通常の意味でのデフォルトは起こらない。
    (米国が通貨を発行して返済できるため。)
    そうした究極の状況でなくとも、高い流動性・低い金利での調達が可能となっている。
  • 金融ビジネス
    ウォール街は実体経済のシェア以上に世界でサービス提供の機会を与えられる。
    国際取引の半分以上はドル建てだが、世界経済に占める米経済の割合は為替ベースで22%、購買力平価では15%にすぎない。
  • 世界での金融規制
    国際金融の決済システムの要所を握れるため、世界の金融に対して監視・影響力を行使できる。

この特権が米国自身の失策によって揺らいできたとサックス教授は解説する。


すでに1960年代終わりの米国の財政・金融政策のしくじりによって、1971年にはドルを基軸とするブレトン・ウッズ固定相場制が崩壊した。
リチャード・ニクソン政権は、外国の中央銀行がドルと引き換えに金の返還を受ける権利を一方的に廃止した。
ドル基軸システムの崩壊は欧米で高インフレの10年を招き、そして突然1980年代初めに米国にコストの大きなディスインフレーションをもたらした。

この後も米国の失策は続く。
サックス教授は1997年のアジア危機対応、2008年の世界金融危機を挙げている。
これらが欧州や中国に米ドル離れのインセンティブを与えてきたという。
そして今、トランプ大統領が貿易戦争とイラン制裁という誤りを犯しており、さらに欧州と中国の背中を押すだろうという。
中国は着々と人民元の経済圏を拡大し、欧州はIMFのユーロ版である欧州通貨基金をもくろんでいる。
日本も例外ではない。
アジア危機以降、日本はIMFのアジア版であるアジア通貨基金設立に動いたが、米国の反対で果たせなかった。
その理念はAMROで一部実現されたが、日本が米経済の呪縛から逃れられたとはいいがたい。

サックス教授は、トランプ政権の財政政策の効果が短期的なものに終わると予想する。
財政政策がもたらしたドル高も一時的と考えている。

数年の話となれば、トランプのバラマキ財政政策と無謀な通商・制裁政策は米経済を害し、世界金融におけるドルの役割を損なうことになるだろう。


 - 海外経済, 政治 , ,