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取得価額のインフレ調整?

ドナルド・トランプ大統領が、キャピタル・ゲイン課税における取得価額にインフレ調整を施すというアイデアに興味を示している。
ラリー・クドロー米国家経済会議委員長が主張してきたアイデアだが、ここに来て実現の可能性が高まっている。


「たくさんの人が好意的だが、反対している人もいる。
しかし、私はとても前向きに考えている。」

トランプ大統領がBloombergに話したという。
この政権に正しいことをやろうという考えはほとんどないのではないか。
昨年末の法人税分野における税制改革には相応の理屈があった。
税制を簡素化することは重要な視点であり、長い間に溜まった澱を洗い流すことは有益だった。
ただし、財源をともなわない減税がセットになっていたから、幅広い層から非難をあびている。

そうした状況でも、トランプ政権はさらに減税2.0を実施しようとしている。
中間選挙の年だから、ターゲットは個人の所得税だ。
ムニューチン財務長官は7月、この減税措置を議会の承認なく実現する方法について検討していると話した。
変更内容を取得価額の算出方法に矮小化するなどして、議会による議論を回避しようとでも言うのだろう。
すばらしい民主主義ではないか。

政権のアイデアにはいくつも問題がある。
最大のものは、クドロー委員長が「幻の所得」と呼ぶ概念の偏狭さだ。

  • 税率: インフレ調整をするなら、それに見合う税率引き上げを行うべきではないか。
    結局のところ、なぜ、インフレ調整なのかと言えば、投資減税を行いたいからなのだ。
    しかも、その恩恵のほとんどは金融資産を多く保有する富裕層に分配される。
    トランプ大統領を支持するラスト・ベルトの労働者ではない。
  • なぜ投資だけなのか:事業資産にも適用すべきではないか。
    売掛、在庫、設備の回収・除却にもインフレ・コストを加味しないのか。
    なぜ、実体経済を支える事業会社ではなく、投資家を対象とするのか。
  • なぜ資産だけなのか: 資産保有にインフレ・コストを加味するなら、負債にもインフレによる恩恵分を加味するのがバランスであろう。
    つまり、負債には時間とともに税務上の益金を計上すべきとなる。
    (これはレバレッジの妙味を減じることになる。)

このアイデアは《減税を行う》という観点以外では評価しがたい。
クドロー委員長はベア・スターンズとCNBCでキャリアを積み、ムニューチン長官はゴールドマン・サックス出身だ。
金融出身者は政権の見識を保つのに寄与すると期待されてきたが、もうそういう望みも持つべきではないのかもしれない。


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