海外経済

クルーグマン:現実を知ることから始まる
2018年9月2日

GDPが社会の幸福度を示さない

日本でもGDPに対する同様な指摘は多くある。
白川前日銀総裁は、日本社会が海外における低成長国とは明らかに異なるとし、GDPが社会の幸福度を示さないと示唆している。
それでも、GDPを主要な目標に据えざるをえない政治について「われわれは今後どのような社会を実現したいと望んでいるのだろうか」と問題提起をしている。


それとは異なる観点からGDPの有用性に疑問を呈するのは渡辺努教授早川英男氏だ。
技術革新等の進展により幅広い分野で無償または極めて安価なサービス(場合によっては財)が増えている。
GDPには無償サービスは加算されないし、超安価なサービスも全体の数字に効いてこない。
しかし、対価はゼロまたは僅少でも、私たちはそのようなサービスから大きな幸福を得ている。

知ることがすべてのスタート

今回のクルーグマン教授の問題意識は、上記の日本の例とは異なる。
GDPという全体のパイだけを見るのではなく、その切り分けにまで目をむけようという提言だ。
こうした提案は、たとえばトランプを支持する労働者にとっても受け入れやすい話のように思えるが、これまでのところそうなっていない。
教授は、共和党が非難を回避するために、国民に真実を知らせないのだと批判している。
一方、進歩主義者は、問題解決に取り組むためにも真実を知りたいと考えているのだという。

知識とは客観的に無知よりもよいものだ。
現代の米国において、実際に経済成長の恩恵を受けているのは誰かを知ることは実に本当に重要なことだ。
だから、それを知って、広めることは政府の仕事の一部なんだ。

クルーグマン教授のこの主張は、日本にとっても極めて重要な視点なのではないか。
アベノミクスが求めると主張する最終地点については誰も批判はできないかもしれない。
しかし、その経過で、異次元緩和、財政政策、規制緩和の恩恵が誰に分配されているのか、それは適切なのか。
これを検証するのは官邸にへつらわない省庁の仕事だろうし、メディアの仕事だろう。
リーダーはそれを促す度量を持つべきと、米国の状況を見ながら考えなければいけない。
さもないと、ドナルド・トランプと同じレベルの国・リーダーと言われてしまう。


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