ピーター・シフ:パウエル「何でもやる」の真意

Euro Pacific CapitalのPeter Schiff氏が、パウエルFRB議長の発言の真意を深読みしている。
米国は財政従属によりインフレ昂進が避けられず、スタグフレーションが予想されるという。


「FRBがいやいやながらインフレの問題を認めるまでに本当にどこまでインフレが行くかなんて誰もわからない。
インフレが問題とされるまでにインフレはFRBの把握のしかたでも4-5%になるかもしれない。
そうしたら本当にFRBは(インフレの)魔物をボトルに戻すために『何でもやる』だろうか。」

シフ氏はポッドキャストで、ジャクソンホールでのパウエルFRB議長の発言にコメントした。
議長は講演の中で、FRBが米経済のために「何でもやる」と約束している。
しかし、シフ氏によれば、FRBの物価目標よりインフレが上離れすればFRBにはやれることがなくなるという。

そのためには大幅な利上げ、とても強引なFRBが必要とされ、経済はそれに耐えられないだろう。
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しかし、もちろん、債務の大きさを考えると、FRBが金利をインフレ抑制のために7、8、9%に引き上げれば、再び金融危機を引き起こすだけでなく、米政府に社会保障やメディケアで大幅な歳出削減を強いるか、大幅な増税を強いるか、景気後退ならば米国債のデフォルトを強いるだろう。

米エコノミストの間でのシフ氏の立ち位置を考えれば、弱気派の他に終末論者との形容を避けられない。
しかし、その終末とは決して遠くないところを指しているようだ。
シフ氏の終末シナリオではインフレが4-5%、金利が7-9%であることがわかる。
差をとれば実質金利として3-4%となる。
これは金融引き締めのための実質金利だから、中立的な実質金利はこれより低く見ていることになる。
仮に中立的な金利を2-3%とすれば、これはひどく現実的な仮定だ。


さらに、現在の米国のCPI総合は3%弱まで来ている。
仮に4%が入口だとすれば、何かの弾みで迷い込んでしまうかもしれない。

では、4%のインフレ、7%の金利は本当に危機を意味するのか。
米政府の債務、FRBのバランスシートの大きさを考えると否定はできない。
ならば、なぜ今、危機の兆候が見られないか。
それは、米金利、とりわけ米長期金利がインフレ上昇を無視して低位に安定し続けているからだ。
シフ氏はこの不思議な安定がいつかは崩れると見ている。

「経済はすでに景気後退入りしているかもしれない。
私はスタグフレーションに向かっていると予想している。
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インフレと景気後退は同時に起こりうる。
以前そうなったことがあり、再びそうなると予想している。
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何でもやるという言葉は基本的に経済のハルマゲドンを意味しており、私はちょっと信じられない。」

シフ氏は、不測のインフレが起こった時に、中央銀行が「何でもやる」ことで危機を切り抜けられるという楽観論に疑問を呈している。
財政がひどく悪化してしまった状況では、インフレに対して金融引き締めをしたくとも、そうすれば財政が持たなくなってしまう。
だから、シフ氏は、パウエル議長の「何でもやる」という宣言をポーズにすぎないとし、その真意を深読みしている。

パウエル議長が言っているのは、FRBの利上げが終わりに近づいているということだろう。
インフレがどうなろうと本当のところ重要でない、あるいは、これ以上インフレが進んでもFRBがやることはないと言っているのだ。

シフ氏は、財政従属を見抜き、FRBが金融緩和を止められないと予想する。
投資へのインプリケーションとしては、金と新興国通貨にプラス、米ドルにマイナスだという。
もっとも、これはシフ氏のいつもの推奨でもある。


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