ロバート・シラー:減税よりも市場心理

資産価格の実証的研究で2013年ノーベル経済学賞を受賞したロバート・シラー教授が、米史上最長の強気相場についてコメントした。
このニュースは株価調整を誘う大きな材料にはならないだろうという。


「ほとんどの人はわざわざ法人税がいくらかなんて計算していない。
みんなドナルド・トランプを新時代の大統領と考えているんだ。
彼は人々を鼓舞する話し手であり、米大統領として初めての扇動的話し手だ。
この上げ相場は心理と自由市場経済の複雑な相互作用の産物だと考えている。」

シラー教授はCNBCで、市場を解釈する上での心理面の重要さを指摘した。
市場関係者はとかくあてにならない数字を並べたがる。
そもそも将来を正確に言い当てることなどできないのがわかっていながら、そのいい加減な数字で投資家を煽ろうとする。
シラー教授はトランプ減税を「市場に影響を及ぼす多くの材料の1つにすぎない」と言い切っている。
税率の変化という比較的堅い数字まで「1つにすぎない」と言うあたりが、他に追随を許さない一流の行動経済学者である。
では、教授が重視する市場心理はどうなっているのか。

「現在の強気相場は最長記録を打ち立てた。
ほとんどの投資家にとっては心配な兆しであるべきことだ。」

シラー教授が注目しているのは、長く続く強気相場への不安感だ。
1930年代からの13回の強気相場の中で、2009年以降続く現在の強気相場が最長となった。
長く続いたから自動的に下げる確率が高くなるものでもなかろうが、それでも心配が募るのが人情。
果たしてどうなのか。

私の推測は、このニュースがさほど劇的ではないということ。
調整が起こる確率を大きくは変えないだろう。
でも、間違いかもしれないけどね。


この市場の無頓着について、シラー教授は2つの枝葉を指摘している。
低インフレと自社株買いである。
企業が実際には強くなっていなくても、これらが株価を押し上げる。
王道とは異なる理由でも株価が上がっている。
これが、強気相場最長記録の印象を弱めてしまうのだという。

では、米国株はまだまだ上がるのか。
シラー教授は、前回最長記録が生まれた1990年代を引き合いに出し、その時は数年調整が起こらなかったと語った。

「人々は1996年頃に強気相場の最長記録について話題にし始めた。
そこから4年間もさらに上げ続けた。」

シラー教授はバリュエーションについても予見性の限界を明かしている。
現状のCAPEレシオは32倍超と歴史的に極めて高い水準にある。
(過去同水準にあった2度では、その後数年のうちに大暴落が起こっている。)
しかし、史上最高をつけた2000年ドットコム・バブルでは今より5割近くも高い44倍超まで上昇している。

Robert ShillerのCAPEレシオ
Robert ShillerのCAPEレシオ

「私はこうしたレシオが人々の考えの決め手になるとは考えていない。
何かが起こった時にニュースで取り上げられるんだ。
しかし、株式市場の歴史では、これらレシオは転換点を予想するものではなかった。」

確かにCAPEレシオは将来の株価の転換点を予想できない。
ところが、少なくとも過去160年近くについて株価の中央回帰を予想してきた。
いつかはわからなくとも、必ず下がると示唆しているのである。


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