リチャード・クー:貿易戦争回避の要因

野村総研のリチャード・クー氏が、米金融政策やトランプ政権の強硬外交についてコメントしている。
トランプ大統領の発言によって、FRBが利上げを継続する確率はむしろ高まったのだという。


パウエルFRB議長の発言は、米インフレが現在2%近辺で推移している事実と合わせて、FRBが2018年末までにさらに2回利上げを実施するとの市場の確信を強めている。

クー氏の議会証言の内容をFXStreetが伝えている。
金融政策がいまだ緩和的な中で財政刺激策がとられ、米経済は本当に強い。
市場が利上げを予想するのは当然のことだ。
ところが、ここに横やりが入ろうとしている。
トランプ大統領が利上げに不快感を示したというのだ。
クー氏はこれをリンドン・ジョンソン大統領以来のタブーが破られたと解説し、大統領の真意を推測している。

「トランプ大統領のコメントは、彼が自慢できる2つの功績が強い経済と高い株価である事実から来たものだろう。
彼は、それを台無しにしかねないさらなる金融引き締めを止めたいのだ。

彼は株価下落への布石を打っているのかもしれない。
こうしておけば、市場が下落した時にFRBのせいにできるためだ。」

ポピュリストにありがちな、よこしまな内面をよく見通したコメントだ。
こうしたよこしまな政治家は米国以外にもいそうではないか。


クー氏は、大統領の発言がFRBのスタンスを変化させることはないと予想する。
それどころか、本当に利上げをやめさせたいならば、逆効果になると見ている。

「大統領のコメントによって、実際には、FRBはその独立性を証明するためにも予定通り利上げせざるをえなくなる。

経済がこれほど強いのにFRBが引き締めペースを鈍化させれば、大統領のプレッシャーに屈したと見られかねない。
そうなれば、トルコで見られるようなインフレ懸念に火がつきかねない。」

トランプ大統領は現在いくつかの国・地域に喧嘩を売っている最中だ。
最大の懸念は米中貿易摩擦だし、現在ホットと言えばトルコ危機だろう。
クー氏はこうしたゴタゴタについて、2つの出口の可能性を示している。
1つ目は経済・市場悪化のシナリオだ。

「米大統領の中国との貿易戦争、トルコへの強硬路線は両方とも強い米国経済と株式市場を前提としている。
株価が急落すれば、すぐに発言がトーン・ダウンするのではないか。」

もう1つはクー氏のレポートに書かれている(Nikkei Asian Review報)。
ここで、クー氏は企業が積極的な事業活動をやめて守りに入ることを心配した上で、中国側の事情を斟酌している。

「習近平首席の状況が変化した今、中国が面子を保てる妥協案が容認されるだろう。
このことは、米中貿易戦争のエスカレート回避の道が存在するかもしれないことを示唆している。」


 - 海外経済, 政治