日銀自ら提起するQQEの矛盾

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日本銀行は15日「日本の非伝統的金融政策と債券市場」と題するディスカッション・ペーパーを公表している。
この論文の中で、日本の異次元緩和政策に内在する根本的な矛盾が指摘されている。


論文の著者は英ダラム大学のParantap Basu教授と慶応義塾大学の和田賢治教授だ。
Basu教授は2017年から日銀の客員であった。
ディスカッション・ペーパーは必ずしも日銀の見解を示すものではないと断ってあるものの、日銀として論考が誤りと考えるならわざわざ日銀から公表することはなかろう。
両教授が矛盾を指摘するのは2016年に導入されたイールド・カーブ・コントロールと2%物価目標である。
換言すれば以下2つの目標となる:

「(i) 短期・長期の名目金利を低位に保つ。
(ii) 物価上昇率を2%超に維持する。」

論文の結論はこうだ:

私たちのDSGEモデルによる短期的分析によれば、これら2つの目標は標準的な量的緩和政策によっては達成できそうにない。

短期ではマイナス金利が効く

モデル計算の結果はともかく、定性的にはどういうことなのか。
論文は長期と短期を分けて解説する。


「プラスの量的緩和ショックは、インフレと名目最終利回りを同時に上昇させる。
これは、量的緩和ショックの生み出すプラスのインフレ期待が最終利回りを含むすべての名目金利を押し上げるためだ。
しかし、実質最終利回りは低下するものの、量的緩和によって引き起こされるインフレ期待を上回るほどではない。」

インフレ・ターゲットが求めるのは実質金利の押し下げだ。
名目金利が一定なら、期待インフレが上昇すれば、実質金利はその分下がる。
ところが、実際には期待インフレが上昇するのと同時に名目金利にもインフレ分の押し上げ圧力がかかる。
結果、実質金利は期待インフレ上昇分ほど低下しないと言いたいのだ。
ただし、短期ではこの関係は必ずしもあてはまらない。

「付利引き下げという最近の異次元緩和の実験は、この状況を救済してくれる。
・・・マイナス金利ショックは名目最終利回りを低下させるが、同時にインフレを押し上げ、少なくとも短期的には両目標を実現可能にする。」

2016年1月のマイナス金利導入では、イールド・カーブの広い範囲について金利が予想以上に低下した。
論文の指摘は、この現象と擦り合っているように見える。
明確に書かれてはいないが、論文は、短期的施策として、量的緩和より(伝統的な利下げの延長である)マイナス金利の方に有効性を見いだしているように感じられる。

(次ページ: QQEをどうすべきか)


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