佐々木融氏:日銀に残された武器

JP Morganの佐々木融氏が、7月30-31日の日銀金融政策決定会合についてコメントしている。
日銀がやれることは、もう時間稼ぎしか残されていないとの見立てだ。


「過去の金融政策があまりにも硬直的だったため、市場機能に対して副作用を及ぼしていた。
日銀はそうした硬直的な金融政策を長くは継続できないとして、柔軟性を持たせることで金融緩和を長く続けようとしているのだろう。」

佐々木氏がBloombergに語った。
確かに日銀のイールド・カーブ・コントロールはややマージンが小さすぎた。
イールド・カーブとは、すべての年限が互いに連動している。
その中で、短期(超過準備の一部)を-0.1%に固定し、10年金利も±0.1%の中に収めようとしていた。
これでは、市場は考えることをやめてしまうし、仮に何かの拍子に考え始めると、逆に日銀を振り切ってしまいかねない

「金融業界からの批判がどれだけ効いたのかはわからないが、明らかなのは市場の機能が低下していること。
これは金融業界だけでなく日本経済全体にとってマイナスだ。
日銀はそうした副作用を勘案し、金融政策を微調整したのだろう。」

佐々木氏は、現状の金融政策にさらに副作用が認められれば、日銀はそれに対応せざるをえなくなると予想している。
その上で、日銀に残された武器はなく、今後は政府が主役を務めるべきと話している。


日銀がやれれるのは時間を買う、長く続けることだけだ。
追加緩和は不可能で(緩和の)タイム・フレームをできるだけ長くすることしかない。
その間に政府が構造改革に努め、低インフレをもたらしている日本経済の構造問題に取り組まなければならない。

数年前の米国の議論が思い出される。
2015年頃、米国ではまだ2%物価目標達成を確信するには至っていなかった。
金融政策はやり尽された感があり、財政政策と構造改革が叫ばれていた。
この翌年、トランプ大統領が誕生すると、かなり強引な内容の両政策を実現してしまった。
これが、米国の物価目標達成を決定づけたのである。

しかし、財政について言えば、日本は米国より厳しい制約を抱えている。
また、仮に財政政策を打っても、リカーディアンな日本社会では消費が伸びす、物価も上昇しない可能性がある。

「個人的には、インフレが上昇しにくい理由の1つは、年金制度など日本経済の構造にあると考えている。
多くの日本人が将来の年金が受け取れるか疑っており、大きく消費するのではなく貯蓄を増やしたがる。
こうした心理が、賃金が上昇しても消費が拡大しない原因になっている。」

佐々木氏は昔のデータから、日本では失業率が2.5%を下回るようになると賃上げが加速し、インフレにつながる傾向が見られると指摘する。
だから、まだしばらく様子を見たいとコメントしたが、2.5%未満の失業率は、佐々木氏自身が指摘した財政問題の逆風を跳ね返せるだろうか。


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