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マーティン・フェルドシュタインの貯蓄率向上策

民主党・共和党両政権で要職を務めたMartin Feldsteinハーバード大学教授が、米家計貯蓄率の向上策を提案している。
貯蓄を増やし投資を増やす趣旨とされているが、どうも勘繰りたくなる提案なのだ。


1960-80年、家計貯蓄率は税引後所得に対して10-13%で推移し、それが工場・設備の投資にあてられた。
それ以後、家計貯蓄率は急激に低下した。
過去10年では5.5%、現在は3.4%にすぎない。

フェルドシュタイン教授がProject Syndicateで、米家計貯蓄率の低下に危機感を示し、政治による解決を求めた。
教授は、家計貯蓄率を上昇させる施策として、確定拠出年金や個人退職口座の拡充・設計改善を提案している。
行動経済学的なフレーバーも加えつつ、国民に老後資金のような長期的な貯蓄を促し、それを習慣にさせようという。
日本で言えば、趣旨こそ少々異なるがiDeCoやNISAのような税優遇のある制度を用意しようという提案である。
少々パンチが足りない提案に響いてしまうが、それだけ米国においては難しい課題ということかもしれない。

米国に限らず、先進各国の中には家計貯蓄率が低下傾向にある国が多く見受けられる。


G7諸国の家計貯蓄率
G7諸国の家計貯蓄率

家計貯蓄率に影響する要因

実際、家計貯蓄率の変化には多くの要因が存在し、国によって事情はさまざまだ。

  • 所得: 所得が上がれば貯蓄率は増え、下がれば減るというのが一般的な感覚だ。
  • 人口動態: 所得と関連して、高齢化が進み年金生活者が増えれば、貯蓄率は低下する。
  • 将来や社会保障に対する不安: 不安が高まると、人々は貯蓄を増やすと言われている。
    フランスの高い家計貯蓄率が典型という指摘がある。
    フェルドシュタイン教授によれば、破綻した米社会保障制度をレーガン大統領が救済した時や医療保険が強化された時、米家計貯蓄率は低下したという。
  • 経済政策: 政府が消費を喚起するような政策を打つ時、家計貯蓄率が下がることがある。
    「第2次大戦初期、まだ大恐慌の記憶が残っている頃、不況に対するケインジアン的な恐怖から政治家は貯蓄率低下を望んだ。」

他にも要因はあろうが、とにかく家計貯蓄率はさまざまな要因で上げ下げする。
上がればいいというものではないが、低すぎるのはよくない。
フェルドシュタイン教授は、貯蓄率上昇が投資の増加につながり経済成長を加速すると書いている。
しかし、教授の本当の意図はそれだけだろうか。

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