ロバート・シラー:再配分は大嫌い

執筆:

ロバート・シラー教授が、少なくないアメリカ人がトランプ政権の通商政策を支持する理由を分析している。
それを理解することで、解決策を考えようと試みている。


「なぜこれら(保護主義の)政策を39%もの人たちが支持するのかは謎だ。
大恐慌、第二次大戦、そして1947年のGATT以来、米国は政府も国民も公然と自由貿易を支持してきたのに。」

シラー教授がProject Syndicateで自問している。
教授が他の多くの凝り固まった頭の経済学者らと異なるのは、人間の多様な考えに正面から向かい合おうとするところだ。
経済学者はとかく、人間や組織が合理的な判断に基づき行動すると仮定する。
その《合理的》とは、その経済学者またはそのグループが《合理的》と考えることにすぎない。
それを前提として論理を進めてしまうから、それに合わない経済主体が作る経済を十分に説明することができない。

シラー教授は、人間が理不尽であることを前提に仕事を始める。
ここでも、アダム・スミス、ジェフリー・フランケル、デビッド・ローマーらを引き、自由貿易が全体のパイ、各国のパイを増やすことを認めつつ、それでも自由貿易を支持できない人を理解しようと努めている。

「それは、自由貿易が時としてもたらす雇用の危機、敗者となった時に感じる不公平感から来ているに違いない。
ほとんどの人は哀れみが嫌いだ。」


自由貿易はそれぞれの国に勝者と敗者を生み出す。
それでも、国の繁栄にはプラスだから、多くの政府は自由貿易を選択する。
国内の敗者は救うべきだから、再配分によって救おうとする。
しかし、敗者となる人たちは、施しを受けたいとは思わないのだ。
そもそも、なぜ自由貿易という国策によって、自分たちが施しを受ける立場にならねばならないのか。
自由貿易で割を食う人たちにはそうした思いがある。
また、勝者の側にも自動的な再配分をいやがる傾向がある。

シラー教授は、大昔から「生活保険」を提唱してきたが、それは実現していない。
その一因も、こうした保険が再配分に似ており、施しに見えるからだと分析する。
では、この問題を回避するにはどうすればいいのか。
シラー教授は2つの研究を紹介する。

  • John Ruggie: 多国間のシステムや低い関税を実現するには、政府が国民の経済生活を安定させることが前提。
  • Dani Rodrik: 経済の開放度と歳出対GDP比率の間には正の相関がある。通商のさかんな国は小さな政府でない傾向がある。

シラー教授がこれらメッセージから導き出す解決策は、金銭によらない形での再配分だ。
国民全員に対する教育・医療サービスの提供ならば、それ自体が施しではない。
それでいて、失業時には大きな助けとなるかもしれない。

「トランプの貿易戦争は世界の悲劇だ。
しかし、自由貿易が人々に課すリスクを私たちが認識し、彼らを助ける保険メカニズムを改善するならば、ハッピー・エンディングもありうるだろう。」


 - 政治