ジェレミー・シーゲル:景気後退の引き金を引くもの

ウォートンの魔術師Jeremy Siegel教授の同校オンライン・ジャーナルとのインタビューの続報。
次の景気後退について独特の観察を述べている。


「(米景気拡大は)まだ継続しうる。
景気サイクルは長期化している。
製造業の経済からサービス志向の経済に変化した事実と大きく関係しているはずだ。
製造業のサイクルは(サービス業より)短かった。」

シーゲル教授が9年目に入った米景気拡大についてコメントした。
これは第二次大戦後の米経済で2番目の長さだ。
(最長は1990-2000年の10年。)
しかし、だから景気後退が近いという話にはならないという。
(インタビューの前半部では、米イールド・カーブの平坦化は心配のしすぎと指摘している。)
米経済の産業構造のほか、英国で18年、オーストラリアで20年超という景気拡大期があったことを指摘している。

人々の関心が景気後退の到来に集まるのには理由がある。
米経済の前2回の後退期がバブルの崩壊をともない、危機的な状況を生んだからだ。
2000年にはドットコム・バブルが崩壊し、2007-08年には住宅バブルが崩壊した。
特に後者では100年に一度と言われた金融危機(リーマン危機)をもたらしている。
シーゲル教授は、現状、世界に大きなバブルは見られないという。


「みんなビットコインがバブルだと言う。
私もバブルだと思うが、どう考えても、それが弾けたからといって経済の後退が起きるような規模のものではない。
他にも高すぎるとの議論ができる銘柄もあるが、概して世界にはバブルは存在しない。」

いや、世界のどこかにバブルがあっても、それが米市場から見えないだけかもしれない。
そうした国外のバブルが米経済・市場に打撃を与えるリスクはないのか。
シーゲル教授は1997年のアジア通貨危機を回想する。

「この危機により米市場は急落した。
しかし、1997年に景気後退を迎えることはなかった。
FRBが素早く動き、景気後退から逃れたのだ。
米国以外で危機が起こっても、米国で危機や景気後退が起こるとは限らない。」

シーゲル教授の見方はぶれない。
当初つけた順番どおり、重要なのは金利であり、それを動かす労働市場なのだ。

「最大の危険は、労働のプールがタイトになりすぎることだ。
労働市場がタイトになればFRBは金融を引き締める。
これは賃金が上昇することを意味する。」

シーゲル教授によれば、賃金上昇の進み方が明暗を分けるという。
望ましくない賃金上昇はインフレをもたらし、金利が上昇して経済を後退に導いてしまうのだ。

「生産性の向上なくして賃金が上昇するのはいいことだ。
生産性の向上を必要とする賃金上昇は、単に労働者が不足していることを意味し、良いことではない。
それがインフレをもたらす。
コストの上昇が高インフレという形で消費者に転嫁されるからだ。」


 - 海外経済 ,