佐々木融氏:市場が本当に求めているもの

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JP Morganの佐々木融氏が、金融緩和に対する市場の思いを代弁している。
当局が市場を人為的に歪めていると、投資家はそっぽを向いてしまうと警告している。


『病は気から』というが、『気』だけでは治らない病もある。

佐々木氏がReutersへの寄稿で書いている。
言うまでもなく、日銀の金融政策を評したものだ。
「病」とは低インフレ、「気」とは人々のインフレ期待を指している。
日銀が「気」で「病」を治そうとして5年余りがたつ。
2年程度という話だったのに、いまだ達成のめどさえ立たない。
それなのに最近2年近くは処方箋さえ変えていない。

「物価が思ったように上がらないにもかかわらず、同じ政策を2年続けた結果、それが金融システム不安につながってしまったら・・・」

佐々木氏は日銀法第1条に立ち返る。

  1. 日本銀行は、我が国の中央銀行として、銀行券を発行するとともに、通貨及び金融の調節を行うことを目的とする。
  2. 日本銀行は、前項に規定するもののほか、銀行その他の金融機関の間で行われる資金決済の円滑の確保を図り、もって信用秩序の維持に資することを目的とする。

佐々木氏は、現在の日銀が金融調節には熱心だが、信用秩序の維持では十分な注意が払われているか疑問が残ると示唆している。
こうしたリスクが実際に発現するか否かは予見が難しいが、もし発現すれば「そのツケは相当深刻なものとなる」ことが予想されるからだ。


金融政策の担い手の苦境

「JPモルガン証券の銀行セクターアナリストの試算によれば、このまま日銀がイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)を続け、長期金利を現在の水準に維持していると、地銀105行のうち10行程度が2020年度に赤字(経常利益ベース)になる見通しだ(同試算では、与信費用増やリスク性有価証券損などの多少のストレスで赤字となる『赤字予備軍』まで含めれば、40行近くに上る)。」

銀行も企業だから、一期赤字になったからといって大騒ぎするにはあたらない。
しかし、この試算によれば、これは一期だけの話ではない。

しかも、リーマン・ショック時のような一時的な赤字ではなく、構造的かつ慢性的な赤字となるため、各行の足元の自己資本・流動性に問題はなくても、銀行システムの脆弱化につながり得ると指摘している。

別に銀行を救えばいいというものではない。
しかし、銀行とは金融政策の効果の伝達経路の重要な部分を担っている。
銀行が経常赤字になるとは、その銀行の金融仲介機能の損益がマイナスになるということ。
つまり、金融刺激策の要諦である信用創造を進めることが、その銀行にとってマイナスになることである。
これでは信用創造が進まないどころか、逆回転さえしかねない。

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