加藤出氏:日本の物価が上がらない3つのワケ

東短リサーチの加藤出氏が、日本の物価が上がりにくい理由を解説している。
その中身を見てみると、金融緩和政策が自らの尻尾に噛みついている構図が見えてくる。

「・家賃
 ・将来不安
 ・低金利政策が招く低価格競争」


加藤氏がテレビ東京番組で、日本の物価上昇率が上がりにくい理由を3つ挙げた。
欧米で言われているような「グローバル化やデジタル革命」ももちろん原因であろうが、それでは欧米と日本の間の物価上昇率の差は説明できないという。

5月のCPI(食料とエネルギーを除く)と家賃上昇率
(出典: テレビ東京「モーサテ」)
CPI 家賃上昇率
米国 2.2% 3.6%
ドイツ 1.5% 1.6%
日本 0.1% -0.2%

家賃は決定的な要因

第1に挙げた家賃(含む帰属家賃)について、加藤氏はこの項目が日本のコア・インフレ率(日本流に言えばコアコア)の計算上2割近い比率を占めている点を指摘する。
家計における住居費の割合が大きいのだから、当然といえば当然だ。
家賃が上がらないと、日本のコア・インフレ率は上がりにくい。
家賃が上昇する場合、住宅価格の上昇も前後して起こるものだが、日本の場合、先進国の中でも住宅価格は落ち着いた動きを続けている。

各国住宅価格の推移(1985年を100とした指数)
各国住宅価格の推移(1985年を100とした指数)

加藤氏は対照的な欧米の事情を説明する。


「米国の場合、5月に(家賃が前年比)3.6%上がっているが、家賃と帰属家賃を除くと米コア・インフレは1.3%に下がる。
家賃というのは決定的に大きい。
ドイツでは家賃の比率はさほど大きくないが、近年の難民・移民(流入)で住宅不足となっており、住宅価格と家賃が高騰している。」

加藤氏は日本の家賃が上がらない要因として、人口動態と最近の賃貸アパート・ブームを挙げ、物価目標「2%は遠い」と予想した。
賃貸アパート・ブームの片棒を担いだのが異次元緩和だとすれば、何とも皮肉なことだ。
金融緩和で不動産価格が急騰でもすればストップがかかったのかもしれない。
しかし、不動産価格上昇が極端でなかったため、インカム・ゲインを求めるアパート投資にブレーキがかかりにくかった面がある。

物価上昇が将来不安を引き起こす

加藤氏は、日銀の目指す物価上昇が、逆に家計にとっては将来不安を掻き立てている可能性に言及した。
その背景には、安定的に実質賃金の上昇を見込みにくい社会風潮がある。

「欧州では物価が上がると、労働組合が強いために翌年には最低でも物価上昇分は賃上げになるという慣行が出来上がっている。
日本は近年そうなっていない。」

日本の企業の強欲を責めるべきか、労働組合の弱腰を責めるべきか、それはわからないが、とにかくこれが現実なのだ。
日本政府が産業界に賃上げを促すことは(その是非はともかく)この問題の解決と方向性では擦り合っている。
一方で、働き方改革関連法は、問題の解決とは逆方向を向いたものとなる可能性が高い。

加藤氏はアベノミクスで起こったことを(価値観を交えず)淡々と語った。

「過去5年の政策の結果を見てみると、物価が一時的に上がるとそれが将来不安を強める要因になり、他の品目の消費が落ちるということの繰り返しだ。
なかなか順回転にならない。」

低金利政策が招く低価格競争

加藤氏は、参入障壁の低い業種において低金利政策がデフレ要因となりうる点を指摘している。
金利が低ければ固定費は下がる。
結果、損益分岐点が下がるため、どんどん新規参入を招き、過当競争に至る。
こうしたダイナミクスはあまねく存在する当然の構図ではあるが、それを低金利が助長してしまっているというわけだ。

「宅配便のように寡占化が進んでいる業種では値上げしやすいが、低金利を背景にどんどんライバルが出てくる業種は(売価を)上げにくい。」


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