ローレンス・サマーズ:連邦職業保証の3つの課題

ローレンス・サマーズ元財務長官(現ハーバード大学教授)が、進歩主義者の中で提唱されている連邦職業保証(federal job guarantee)について論じている。
労働者を守るのは技術革新や自由貿易の否定ではなく、労働関連の慎重な政策ミックスにあるという。


進歩主義者の最近の『大きな』アイデア、連邦職業保証の背景にある思いはまったく正当なものだ。

サマーズ氏は自身のブログで「連邦職業保証」の構想について書いている。
職につかない人たちがアルコールやドラッグに溺れやすいことを示し、人が働くことの大切さを説いている。
しかし、サマーズ氏が論じたい連邦職業保証とは単なる失業対策ではない。

「この点で米経済はその潜在力を生かしきれていない。
25-54歳の成人人口のうち就業中あるいは求職中の割合は過去20年間低下してきた。
・・・諸外国とは対照的に、米国において就業している成人女性の割合は1999年以来低下している。」

トランプ大統領は、ラストベルトなど失業が増える地域から多くの支持を受けて大統領選に勝利した。
サマーズ氏は、非就業者増加のトレンドが米政治に影響を及ぼし、技術革新や自由貿易の妨げになっていると指摘する。
職を失った人たちだけでなく職を求めることさえやめた人たちに再び職を保証できれば、人々の不満を減らし、再び米社会が理詰めの方向を歩き始めることができるはずだ。
奇しくも大規模な金融・財政政策の中で米経済でも供給制約が高まっている。
労働参加率の向上はそれを埋める効果を持っている。


サマーズ氏は連邦職業保証の考えに賛成だ。
しかし、守れない約束をすべきではないと言う。
サマーズ氏は単なる学者ではなく、ビル・クリントン政権で財務長官を務めた人物。
現実主義者であり、政治の駆け引きにも通じている。
そのサマーズ氏が待ったをかける要因は3つ:

  • 政府・民間に発生するコスト
    保証する給料が安ければ、助けにならない。
    高ければ、政府の財政負担が大きくなるだけでなく、民間企業が賃上げを強いられ大きな負担となる。
  • どういう職を与えるか
    何をやってもらうか、どのような雇用形態にすべきかをニーズと効率の点から詰める必要がある。
  • マクロ経済への影響
    「財政赤字の大きな拡大、労働市場の引き締まり、あるいは賃上げ圧力を予想すれば、FRBはおそらく大幅な利上げで対応するだろう。
    これは支出を減らし、保証スキームから得られる雇用を打ち消してしまう。
    一方、もしもこの政策が新税を財源とするなら、その税を支払う人による需要は低下する。
    これは民間セクターの雇用を減らし、職業保証による増分を打ち消してしまう。」

サマーズ氏は、この3つの課題が解決できるならすばらしいと書いている。
逆に、解決されるまでは、言葉通りの話を前に進めることには慎重だ。

「賃金助成、対象を絞った政府歳出、扶養家族のいる労働者への助成、職業訓練・職業紹介の強化の組み合わせの方が、職業保証のニーズに合った、より現実的なやり方だろう。」


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