インフレ、為替、GDPのワンダーランド

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日銀の原田泰審議委員が異次元緩和の成果を誇らしく語っている。
リフレ政策正当化のためのデータは、実は思わぬものの助けを受けていた。


「QQE後の日本の成長率はG7の中で最高となり、過去10年のトレンドよりも明らかに高くなっています。
働きたい人が、より働けるようになったからです。」

ある経済懇談会における挨拶で原田氏が語った。
原田氏は続けている。

「もちろん、『この程度の生産性の上昇では駄目だ』『成長戦略、構造改革の一層の進展によって、もっと生産性を高めなければならない』と言う方もいます。
しかし、そう言う方が、どのような政策を行えば、どのくらい生産性が高まるのか、明確に説明されたことはないように思います。
誤解のないように申し上げておきますが、私は構造改革に大賛成です。
ただし、金融緩和政策と構造改革は両方すれば良いだけだと申し上げたいのです。」

これらの発言は正論である。
「明確に説明されたことはない」というのは少々言いすぎかもしれないが、リフレ派も反リフレ派も構造改革を議論する時、突如として空論に走るのはよく見る光景だ。

冷酷な2つの極論

その点で、リフレ派と反リフレ派の他にあと2つ重要な極論が世間には存在する。
その一つ目は小泉政権の前半であり、竹中平蔵元大臣だ。
小泉元首相の立派だった点は《改革には痛みをともなう》と言い切ったこと。
麻薬のような過度な金融・財政政策に頼ることなく、構造改革を旗印に戦ったことだ。
そして、経済政策の本質にこだわった竹中氏は(やや与党に同情的すぎる点を除けば)一貫して正論を唱え続けている。


もう1つの極論はレッセ・フェールに任せるという考えだ。
そもそも経済安定化政策であれば、景気循環の相にしたがい刺激と抑制の両方の施策があってしかるべきだ。
しかし、日本はこの四半世紀、一貫して刺激策だけに専念している。
いったん下駄を履かない場合の居所まで落ちた方がいいという考えだ。
日本のGDPはいったん何割か縮小して、そこから高い成長率で回復を始めるだろう。

これもまた一種の正論かもしれない。
日本はギリシャを除けばもっとも財政が傷んだ先進国であり、金融緩和の規模も先進国の中で最大だ。
こうした刺激策が映し出すハリボテのGDPをいったん本当の姿にもどそうという考えだろう。
しかし、この考えは短期的には国民の多くに苦しみを強いる。
日本人はこうしたプロセスを自ら選択しようとはしないだろう。

口喧嘩にのってしまう権力

こう並べてみてわかるのは、リフレ派の抜きんでた能天気さだ。
起こりうるプラスに目を向け、起こりうるマイナスを黙殺する。
なぜ、甘んじて批判を受けられないのだろう。
それは権力を持った側の果たすべき役割の1つなのに。

挙句の果てに、やりすぎのレトリックを見抜かれてしまう。
信頼感はどんどん失われるばかりだ。

(次ページ: やりすぎのレトリック)


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