債券ディーラーの怨念

執筆:

QUICKが月次で行っている調査「QUICK月次調査<債券>」が面白い。
そこには債券市場関係者の怨念のようなものがこもっている。


「QUICKが2日まとめた月次調査<債券>によると、債券担当者の8割(複数回答)が日銀の長短金利操作(イールド・カーブ・コントロール、YCC)を撤廃するべきと答えた。」

QUICKが伝えている。
(この調査は債券市場関係者141人を対象とし、6月26-28日に行われている。)
当たり前と言えば当たり前の結果だ。
日本の債券市場は日銀の債券買入れによって干上がってしまった。
かつては潤沢な流動性・厚みのあった国債市場でさえ、もはや市場金利と呼べるものが存在するのか疑うほどの出来高だ。
これでは債券市場関係者の収益機会はなくなってしまうし、そもそも仕事がなくなってしまう。
関係者が怒るのも無理もない。

「債券市場が活発化するには何が必要か?」との問いに対しては

  1. イールド・カーブ・コントロールの撤廃 82%
  2. 日銀による国債の買い入れの停止 63%
  3. 物価の上昇 40%
  4. 首相・日銀総裁の交代 35%
  5. 日銀保有国債の市場への放出 19%

とりわけ4の答が怒りのほどを示していよう。
また、3の答が示すことは、政策目標の未達を続ける日銀が、説得力のある達成のめども示せないのに、硬直的な政策運営を続ける可能性を示唆している。


政府・日銀は本当にこのまま債券市場を殺してしまっていいと思っているのだろうか。
債券市場はこれまで、借金まみれの政府の資金繰りを支えてくれた重要な屋台骨の1つだ。
それが今では、政府から国債を買い、それを日銀に売るのが主たる業務になりつつある。
ここで債券市場を廃れさせ、プロの人材が散逸してしまえば、経済が本当に上向いた時、借主(政府)の金利負担が無駄に上昇してしまうかもしれない。

もっとも政府・日銀の楽天家たちは、債券市場は今程度で十分と思っているのだろう。
困れば日銀が買えばいいと考えているに違いない。
少なくとも(近づいていると恐れられている)景気後退期がやってくれば、債券市場は正常化からさらに遠ざかるだろう。
政府が国債を発行し、それがプライマリー・ディーラー等を経て日銀に買い入れられる構図はまだまだ続く。
当然、債券市場関係者はそれをわかっている。

外形的にはポンジ・スキームにしか見えない構図は、国民生活を害しない形で持続可能なのか。
それとも、慢性的に国民生活を害するままだらだらと続くことになるのだろうか。
後者のリスクがゼロでないなら、私たちは資産のすべてを円で持ってはいけないのだろう。


 - 国内経済