渡辺努教授:政策金利が低すぎる

東京大学の渡辺努教授が、経済安定化政策の「のり代」のなさについて注意を喚起している。
次の危機対応では、現在正常化を進めているFRBでもやれることは限られてくるという。


「(米物価は)予想より早く上がってきた感じがあるが、(FRBは)金融正常化に向けてこれから政策金利を上げていくのだろう。
予想どおりか、少し早めに上げる可能性もある。
そうだとしても懸念は残っている。」

渡辺教授がテレビ東京の番組で話した。
サマーズ元米財務長官の警告を引用し、教授は低すぎるFF金利が心配事だと指摘した。
政策金利が低すぎると、次に大きな危機があった時に対処法がなくなってしまう可能性があるためだ。
FRBが必要以上に利上げを急いでいるように見えるのも、こうしたことが一因となっていると示唆した。

金融政策に余地がなければ財政政策という話になるが、これにも限界がある。
今、米経済では長らく景気刺激の主役を務めてきた金融政策が引き締めに転じ、財政政策が主役になっている。
金融政策正常化を進められるのも、大規模な財政刺激策があったからだ。
しかし、だから次の危機も大丈夫という話ではない。

「危機が起きた時には、逆にフィスカル・スペースが減ってくるという面があるが、一方で金利は少し(下げる)余裕が出てくる。」

確かに利下げの余裕は増えるが、その分、財政が悪化すれば、今後の財政政策の余地は小さくなっていく。
足元の財政政策の費用対効果がすばらしければこの懸念は小さくて済むのだろうが、仮にバラマキ的であれば懸念は大きくなる。


物価目標の代案は何か

渡辺教授は、日銀が物価目標に対して長期戦に入った点を心配する。
2%物価目標のそもそもの趣旨を回顧している。

「もともとなぜ2%を目指していたかというと、その分だけインフレを高めることで政策金利を高くしておきたいためだった。
そうすれば何かあった時に対応できるというのが元々の発想だった。」

渡辺教授の認識は、純粋な少年のような捉え方と言えるかもしれない。
確かに世界の中央銀行の公式見解はそうかもしれない。
つまり、ゼロ金利制約の克服だ。
名目の政策金利はゼロ以下に大きく引き下げるのが現状難しい。
だから、インフレを高めにもっていく。
すると、実質の政策金利はその分下がり、金融緩和の効果が得られるのだ。

しかし、この理屈の真実度はそれぞれの経済において異なる。
物価を引き上げる理由には他にも通貨安誘導のためとか、財政支援のためとか、いくつか建前にできない理由がある。
とにかく、渡辺教授は純粋な少年のような捉え方をしている。
そのため、珍しく日銀に対して厳しい口調となる。

日銀は、物価を上げるのが難しく、長期的に取り組むしかないと言っているが、それはたぶんそうなのだろう。
その時に問題になるのは、単に2%が達成できないだけでなく、金利の『のり代』を確保することができないこと。
・・・そこを放棄したのであれば、何かあった時にどうやってそれをしのぐのか、その備え方をはっきりさせなければいけない。

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