セス・クラーマン:損をしてはいけない

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リーマン危機の少し前2007年10月、セス・クラーマン氏がMITスローン・スクールで行った講演をETF Trendsが紹介している。
クラーマン氏が市場サイクル終期の現象、留意すべきことをわかりやすく語った内容だ。


最も重要な数字は『得られたリターン』ではなく『負うリスクを勘案したリターン』であることを投資家は常に留意しなければならない。
つきつめれば、投資家にとって最も大切なのは、夜ぐっすりと眠れることなんだ。

バリュー投資の旗手としてウォーレン・バフェット氏と並び称される投資家がリーマン危機前夜にこう語っている。
リスク・テイクに見合わない資産価格を目の当たりにして語ったものだ。
ある投資で大儲けできたとしても、それはたまたま投資リスクが発現しなかっただけかもしれない。
「得られたリターン」に統計的な予測力があるのでない限り、それを信じてはならない。
次はリスクが発現して、大きなロスを被るかもしれない。

クラーマン氏は当時の市場環境をこう描写していた。

「人々が正気を失い、投資でなく投機を行い、バリュエーションを無視して市場モメンタムに乗っかり、過剰なレバレッジを働かせ、かつて起こらなかったことが起こるのに賭け、実世界を過度に単純化したコンピューター・モデルを信じている時、常に大きな降伏に至るプレッシャーを受けている。」

すぐれたバリュー投資家は、冒頭の言葉どおり、ぐっすりと眠り、いい夢を見続けている。
バウポストはこの時までに25年の実績を有していたが、その間、年次リターンがマイナスになったことはなかった。
いい夢を見続けるバリュー投資家の秘訣とは何なのか。
それは皮肉にも《夢を見ないこと》だ。


「人々は、他の人が大儲けしている時、自分も儲けたいと願い、市場が下落する時には損をしたくないと願っている。
これらの願望は本質的に対立していることを知らなければならない。
前者の願望成就を約束する者は、ほぼ間違いなく後者を実現できない。」

徹底した現実主義がクラーマン氏の投資の底流に流れている。
株式市場は循環を繰り返すものと観念し《永遠に上げ続ける》といった夢は見ない。
それを波打たせるものは人間そのものであり、人間は両方向に過剰反応して波を大きくする。
バリュー投資家とはアンダーシュートのチャンスを狙うものだ。
一方で、投資回収はオーバーシュートまで欲張らない

この時クラーマン氏のエントリー・ポイントが近づいていた。
同氏はそこで起こる現象を生々しく予想している。

「友人・隣人が裕福になっていくのを見て傍観者が市場に入ったり、否定論者が積極論者にやり込められたり、レバレッジ効果が初期の成功をさらに拡大したりするうち、市場の成功は過剰へとつながっていく。
そして最終的に、おそらく逆張り家が望むより長い時間の後、潮目は変わり、最後の限界的な買い手が参入し、最後の投機資金が借りられ投資され、誰かが売りを決めるか売らざるをえなくなる。
レバレッジを用いる投資家が追証を求められ、パニックした投資家が価格を度外視して投げ売りすると、物事は容易に反転しうる。
すると(バフェットの)警句が再び輝きを増し『損をしてはいけない』が時代の合言葉になるだろう。」


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