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ヘッジ・ファンドのポジション・トークに要注意

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ヘッジ・ファンドのファンド・マネージャー達はなぜ投資コンファレンスで「有望銘柄」を推奨するのか?
古くて新しいこうした疑問に答えるため、ハーバード大学の博士課程の学生Patrick Luo氏が調査・研究を行った。


「銘柄推奨後2日間、買い推奨は市場を1.1%アウトパフォームし、売り推奨は2%アンダーパフォームし、出来高は盛り上がった。」

Luo氏は、投資コンファレンスにおける銘柄推奨が出来高をともなう上げ下げをもたらす点を指摘する。
推奨するヘッジ・ファンドが意図すれば、有用な手段となるかもしれない。
同氏は2つのありうるインセンティブを挙げる:

  • 最善のアイデアを推奨: 運用ファンドや投資戦略のアピールに利用できる。
  • 悪いアイデアを推奨: 売却したい保有銘柄について売りやすい状況を作る。

前者なら聴衆としても喜ぶべきインセンティブだろうが、後者ならとても残念だ。
後者なら、ヘッジ・ファンドのポジション・トークは信用ならないということになる。
そして、世の中とは往々にして残念なものだ。
Luo氏は2008-13年に行われた29の投資コンファレンスから341の買い推奨、41の売り推奨を抽出し、推奨前後のパフォーマンスを調査している。

「推奨銘柄は、推奨の前後両方でプラスのリスク調整後リターンであったことが示された。
しかし、アウトパフォーマンスの大半が推奨の前に起こっていた。
さらに、推奨後のアウトパフォーマンスは、投資コンファレンスに従った他の投資家からの流入によるものである可能性が高い。」

この事実の意味するところは、おかしな銘柄推奨がなされたわけではないものの、推奨のタイミングは遅かったということだろう。
問題は、推奨したヘッジ・ファンドの推奨後の行動である。


推奨後にもアウトパフォームしているものの、ヘッジ・ファンドは推奨しなかった銘柄に比べて推奨銘柄を保有し続けないことがわかった。
逆に、投資コンファレンス後、推奨銘柄のプラスのアルファの大半を得た後、ヘッジ・ファンドはポートフォリオにおける推奨銘柄のウェイトを減らし始めている。

これは決定的だ。
ヘッジ・ファンドはエグジットの土壌を作るために投資推奨を利用しているのである。
すべてのヘッジ・ファンドがそうとは言わないが、平均においてはそうなのだ。
聴く側はよくよく注意しなければならない。

FPでは世界の市場関係者の投資アイデアをお伝えしている。
そうしたアイデアについてもよくよく注意すべきなのだ。
例外は、マクロについての推奨。
例えば、米国株を買いと推奨したところで、よほどのビッグ・ネームでない限りは市場に影響を及ぼせるものではない。
さほどの大物でない人がマクロの推奨をする場合、バイアスは大きくないかもしれない。
私たちは、個々の発言について、発言者にどのようなバイアスがかかりうるかを考えてみるべきだ。

Luo氏の研究では、投資家別の行動パターンにも触れている。
概して言えるのは、投資家はコンファレンス後すみやかに推奨銘柄を買い入れる傾向があること。
ところが、投資家のうちヘッジ・ファンドとミューチュアル・ファンド(米国における主要な投資信託の1形態)では、異なる挙動も見られるという。

  • ヘッジ・ファンド: 推奨者と同じように、コンファレンス前に買い、コンファレンス後に売る。
    推奨者と同様の戦略をとっているか、アイデアを共有していると思われる。
  • ミューチュアル・ファンド: コンファレンス前にアルファが得られるうちにヘッジ・ファンドに売り、コンファレンス後にパフォーマンスが月並みになったところで買う。
    ミューチュアル・ファンドがヘッジ・ファンドの取引の実質的な相手方となっている可能性がある。

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