ピーター・シフ:企業収益に物価上昇は要らない

Euro Pacific CapitalのPeter Schiff氏が、ポッドキャストでリフレ政策を根本から否定している。
やや一方的なきらいはあるものの、この人の持つ知性的・不思議な側面がうかがわれる。


インフレは物価に起こる現象と考える人が多いが、そうではなく、お金に起こる現象だ。
・・・『inflate』は膨張するという意味で、物価は膨張しない。
膨張するのは、マネー・サプライだ。

シフ氏が経済学101の講義をしてくれている。
インフレとはマネー・サプライの膨張を表し、それを別の角度から見ると物価上昇となる。
もちろん、2つの角度から見たインフレが完全に同期するわけではない。
むしろ、別の現象に見えてしまうほどズレがある。
だから、中央銀行が金融緩和を行ってもなかなかインフレが進まないということが起こりうる。

「生産性がより速く上昇すれば、物価が全く上昇しない可能性もある。
実際、マネー・サプライが上昇しても物価が下落する可能性がある。
しかし、だからと言って、インフレがないことを意味するわけではない。
マネー・サプライが拡大しなかったなら、物価はもっと下落していたかもしれない。」

シフ氏は、インフレが消費者にとって悪いことである点を明言する。
本来起こるべき物価下落が金融緩和によって起こらなければ、それも消費者にとっては損失だ。


「インフレが生産性の向上の恩恵を奪ってしまうなら、それもインフレ税だと言える。
これはまだ経済を害している。
しかし、現代では、銀行家、ウォール街、みんなが、物価が上昇した時だけに心配をする。
物価下落を阻害した時には心配しない。」

シフ氏は、中央銀行がサプライ・サイドばかりに気を配り、財・サービスの買い手の厚生に無頓着であると不満げだ。
中央銀行が物価上昇を善とする見方に固執し、それが硬直的な金融緩和への傾斜を招いてきたと考えている。
しかし、デマンド・サイドに目を向ければ、全く逆の思考もありうると、古典的な需要・供給曲線の話を説明している。

「(物価下落は)マージンが下がらない限りにおいて悪いことではない。
コストが下がり売価の下落を転嫁できるなら、損をすることにはならない。
実際、価格下落で販売量が増えるなら、むしろ儲けが増えるだろう。」

シフ氏は携帯電話を例に説明する。
20-30年前、金持ち相手に高い機械を少数売っていた時代と、無数のリテール客に安価な機械を1人1台、2台と売れる時代。
全体としてどちらが儲かっているかは自明だろう。

物価の下落にはいくつも要因があろう。
1つが技術革新による生産性向上・コスト削減だ。
その恩恵まで消費者から奪おうとする政策にシフ氏は大きな疑問を投げかけている。

企業が利益を上げるために物価上昇を必要とするという考えは、単なる純粋なナンセンスだ。
これは一つには中央銀行がリフレ政策を正当化するために用いたプロパガンダにすぎない。


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