時価を語れない経済学

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ある有名な経済学者が滑稽なコラムを週刊エコノミストに書いている。
詳細に凝って本質に触れていないところが興味深い。(浜町SCI)


「会計上、評価損を計上する必要もない。
評価損の問題は無意味なので、議論の対象から外す。」

その経済学者が、日銀の異次元緩和の出口で発生する保有国債と調達金利の逆ざやについてコラムで試算している。
「評価損の問題は無意味」というのは日銀やリフレ派の常套句だ。
簿価でしかものを考えない役人、あるいは、理屈で割り切れない市場を知らない学者ならではの発言とも言える。
なぜ評価損が無意味なのかは理解不能だが、少なくとも金融の世界の話で言えば、エンロンなどを引くまでもなく、時価を議論せず簿価だけの話にしようとするのは詐欺師の常套手段なのである。

この部分を読んだ瞬間、そのコラムを読み続けることは「無意味」ということになるのだが、その後の展開も紹介しよう。
実はこの部分、コラムのかなり序盤にやって来るのだ。
この経済学者は重要な論点を理由も挙げずに回避した後、だらだらと日銀の出口における損益シミュレーションを行っている。
そして、7-8年かけて単年度で数兆円程度の損失だから大丈夫、と示唆しているのである。
よくある試算の1つである。


日銀は将来の損失額推計を公表すべき

日銀に損失が発生し、仮にそれが日本の通貨・金融政策に問題となるなら、追加出資等で対応すべきと、浜町SCIはかねてから繰り返してきた。
政府が後押しし、日銀がルールに則った意思決定で行った金融政策の結果、日銀の財務が悪化するのであれば、その政策への賛否が分かれるとしても、政府として支えるのは当然のことだ。
異次元緩和の問題の1つは、そうしたコストについて事前に国民に提示されていなかった点にある。
始める前に、予算化しろとは言わないが、ある程度の追加出資所要額を提示すべきだった。
それがないから(財政問題と似て)メリットを先食いし負担を先送りする、極めて日本的な悪習になってしまう。

これは今からでも遅くない。
むしろ、推計の精度が上がってくる今だからこそ、価値が大きくなっている。
日銀は、将来発生する損失額推計を国民に継続的に提示すべきだ。
リフレ派が統合政府の考え方を強く主張するなら、政府だけでなく日銀も再建プランを提示すべきだろう。

(次ページ: 将来の損失を市場に織り込め)


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