加藤出氏:次の景気後退で金融不安が顕在化

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総裁2期目を無難にスタートした日銀だが、金融政策正常化観測が浮かんでは消える連続だ。
東短リサーチの加藤出氏が、正常化のタイミングを考える上で景気後退との兼ね合いが重要と指摘している。


日本銀行が行っている長短金利操作について、現行の金利水準では2年以内に限界が来るとの見方がエコノミストの半数近くに達した。
・・・副作用の累積や技術的な限界を考慮した上で、長期金利0%、短期金利マイナス0.1%の金利操作がいつまで持続可能か聞いたところ、1年が8人(18%)、2年が12人(27%)、3年が13人(29%)だった。

Bloombergが独自調査の結果を伝えている。
日銀によるいわゆるステルス・テーパリングが進んでいる。
今月1日にも、直前まで4,500億円としていた残存期間5年超10年以下の国債買入れ額を200億円減額している。
それでも心配された円高は起こらず、市場は異次元緩和の長期化を織り込んでいるようにも見える。

買入れ額を減額すれば、買い入れる玉もさらに長続きするはずだ。
つまり、「技術的な限界」はむしろ遠ざかっている。
それでもエコノミストの過半はあと2年で限界が来ると答えている。
「副作用の累積」という観点が大きく効いているのだろう。
この点は黒田総裁も「リバーサル・レート」という用語で言及しているとおりだ。

中立金利と金融政策

金融政策とは市場金利と中立金利の相対的な位置関係で決まる。
中立金利とは景気を刺激も抑制もしない金利だ。
市場金利を中立金利より下に置けば景気刺激的になり、上に置けば抑制的になる。
市場金利を上下に動かすためのハンドルが政策金利だ。


景気刺激的だからといって、金利というのは低ければいいというものではない。
投資家の立場に立って、利回り約ゼロ%の日本の長期国債の魅力を問い直せばいい。
一般の投資家が10年の資金をゼロ・リターンで固定する意味合いはかなり小さい。
あるとすれば

  • 10年の間にさらに金利低下を予想する向こう見ずな投機
  • 現金をどこかに安全に保管したいという需要
  • (分散、ヘッジのため)ポートフォリオの中に組み込みたい場合

であろうか。

ゼロ金利制約が効いている

あまりにも金利が低下してしまった時、景気刺激的な金利水準であっても投資家の投資意欲は減退する。
この投資家の立場に銀行を置き換えれば、現在の銀行の置かれた立場がわかる。
商業銀行の金利期間は10年ほど長くないから、リスクフリー金利の水準としてはゼロ%どころか水面下に沈んでいる。
もちろん銀行の貸出金利にはいくらか信用スプレッドを載せている。
しかし、慢性的な過当競争でスプレッドは薄い。
長短スプレッドの一部を潜在的デフォルト損失を埋めるのに充ててきたが、イールド・カーブがフラットになるとそれもなくなってしまう。

銀行が貸出を増やそうとしても、潜在的なデフォルト損失をカバーできない。
つまり、コストがリターンを上回ってしまう。
これでは銀行貸出は増えない。
信用創造という、金融政策の主たる経路が働かない。
何のための金融政策なのかという話になる。
(もちろん、為替や資産効果なのだろうが、これらは富・所得を偏在させるデメリットも大きい。)

(次ページ: 金融政策の寿命「2年」の意味)


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