ケネス・ロゴフ:Great Moderationふたたび

Kenneth Rogoffハーバード大学教授が、債務問題への油断に警鐘を鳴らしている。
過度な緊縮は避けるべきとしながら、「完全に安心」と言うような決めつけを戒めている。

「歴史的に高い債務レベルにある国は(平均として)大きなショックに直面すると経済成長が大きく悪化する。
公的債務の多さと経済成長の間の長期的相関は明確にマイナスだ。」


ロゴフ教授がProject Syndicateで淡々と事実を述べている。
公的債務と経済成長の間に負の相関があることは何も驚くことではない。
ただし、これは全体の話であって一国の経済における因果関係を示すものではない。

もちろん、このことが『緊縮』という言葉で知られているように政府の債務負担を積極的に減らすべきという結論につながるわけではない。
深刻な景気後退は国の軍資金を使うべき時であって、貯めるべき時ではない。

かつてIMFのチーフ・エコノミストを務め、『国家は破綻する』の著者としても有名なロゴフ教授が書いている。
「近い将来に大きな戦争や金融危機の現実的危険がないならば」との条件付きではあるが、財政・社会保障について過度な緊縮を行うべきでないという。
むしろ過度な緊縮が世界経済にショックを与える可能性さえ否定できない。


「ひどく悪いショックはどの経済にも起こりえ、その元は通常考えられるものとは異なるかもしれない。」

次のショックを引き起こしうるのは金融危機や中国経済の変調だけではないという。
サイバー攻撃やパンデミックなど、経済サイドではない要因が引き金を引く可能性が指摘されている。
引き金が引かれたら、どこに災難が降りかかるのか。

「仮に、新興国債券のメルトダウンが起こらない確率が高いとしても、最近の神経質な動きは先進国経済にとっても警告なのかもしれない。
結局のところ、どんなに豊かな国であろうと、将来も現在の超低金利環境が永遠に続くと想定すべきではないのだ。」

災難は新興国にも先進国にも起こりうる。
ロゴフ教授が言いたいのは経済・市場の関係者の油断であろう。
教授は、リーマン危機の一因となった「Great Moderation」という死語を回想する。
これは2002年頃に使われ始めた言葉で、景気サイクルの変動のボラティリティが1980年代半ばから永久に低下したとする主張だ。
この主張は経済主体のリスク感覚を鈍らせ、米経済のレバレッジ上昇を招いたとされている。

「先進国経済の債務は完全に『安全』と主張する経済学者は、『Great Moderation』(一世代前に循環的なボラティリティが永遠に低下するとされたこと)を売り込んでいた人間と同様に不気味だ。
多くの場合、同一人物である。」


 - 海外経済, 国内経済