河野龍太郎氏:新財政健全化プランも破綻は確実

BNPパリバの河野龍太郎氏が、日本の財政悪化について強い危機感を示している。
財政健全化プラン自体に問題があり、独立財政機関の必要性を訴えている。

「ウエストミンスター型の議院内閣制を採用する国々では、強い首相権限の弊害が財政運営に及ぶのを回避するため、独立財政機関を導入している。
日本は首相の強いリーダーシップで山積する問題の解決に当たるべく、コンセンサス型民主主義から、多数決型民主主義に移行したのであるから、その弊害を抑えるための独立組織の導入も見習うべきだろう。」


河野氏がReutersへの寄稿で独立財政機関の設置を提言している。
中立的な立場で経済・財政の長期的見通しを作成する同機関は、OECD加盟国ですでに27か国、G7でも6か国が設置済みだ。
官僚が中立的でなくなってから久しい日本において、まだこの機関が存在しない。
財務省のスキャンダルによる権威失墜により、独立財政機関の必要性がさらに声高に叫ばれるようになっている。

「2015年度に策定された財政健全化プランが破綻したのは、日本の財政史において、特筆すべき出来事だ。
・・・景気拡大局面にある中で破綻したという点で、極めて稀なケースである。
足元の景気の実勢よりさらに高めの名目成長の実現を前提にしていたから、不況が訪れる前に、破綻が明らかになった。 」

景気は悪くなく税収もそこそこあるはずなのに、財政健全化プランが破綻した。
これは(不運が全くなかったとは言わないが)プランが間違っていたか、プラン後の政策が間違っていたかであろう。
河野氏は、前者の問題を特に重く見ている。
実現が疑問視されるような前提条件を用いることが、新たな財政健全化プランにも踏襲されてしまったからだ。

「今回の財政健全化プランも、3年後の2021年の中間レビューまでには、達成困難なことが明らかになる。
非現実な高い名目成長を前提にしているのだから、税収は見込んだほど増えないため、よほど奇跡的なことが起こらなければ、少なくともPB収支と公的債務の目標は達成できない。」


2021年には見え見えのウソが明らかになるのだが、とにかくそれまでは政権が財政運営の「フリーハンド」を得ることになる。
経済をエサに票を買い、他分野の政策をゴリ押ししてきた現政権は、フリーハンドによって財政再建を果たそうとするだろうか。
結局このまま拡張的な金融・財政政策を進めると考えるのが自然だろう。
むろん、金融・財政政策を拡張的にすべきか、緊縮的にすべきかには議論の余地は大きい。
しかし、私たちは厳しい日本の現実から目をそらすべきでない。

われわれが直視しなければならないのは、経済が完全雇用にあるにもかかわらず、PB赤字が2018年度もGDPの3.4%もあるという事実だ。
確かに2020―21年度は、第2次大戦末期の混乱の影響で1945―46年の出生率が低く、一時的に75歳になる人が減って、社会保障費の増大ペースも緩み、事態は覆い隠されるが、2022年度以降は団塊世代が75歳を迎え始め深刻さは一気に増す。

日本経済の供給能力がフル稼働にある中で、GDPの3.4%とはどういう数字と捉えればいいだろうか。
2017年度の名目GDPは548.7兆円一般会計税収は57.7兆円
税収対GDP比率は10.5%だ。
むろん歳出削減も必要なのだろうが、3.4%という数字は相当に大きい。
これを名目GDPの拡大で賄うというシナリオを主張する人が絶えないが、どれだけの蓋然性があるのか。

投資家に対する長期的なインプリケーションは何だろう。
日本の財政は再建できない可能性が高いということだろう。
そして、マネタイゼーションという、政府債務を通貨 円に変換する機能を日銀が担い続けるということだろう。
これが持続可能であるなら、日本の低金利は長く続き、それが名目の資産価格に及ぼす影響は自明だ。
(実質ベースでどうなるかは別の話だ。)
仮に持続不可能なら、金利急騰により政府が法的整理を行うか、円の急激な減価(インフレ、円安)が起こるということだろう。


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